「21世紀の擬制資本論―変容する資本主義」鎌倉孝夫著/時潮者(選者:佐藤優)

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長期金利の上昇により、日本経済は大混乱も

「21世紀の擬制資本論―変容する資本主義」鎌倉孝夫著

 高市早苗政権は、外交的にはナショナリズムに舵を切っているが、経済的には新自由主義的政策を推進している。ただし、これまでの政権と異なり、極端なインフレ政策を推進している。この政策がどのような結果をもたらすかについては、主流派経済学(近代経済学)よりも、マルクス経済学(特に理論と実践を区別し、理論を重視する宇野弘蔵学)のアプローチの方が正確な分析を提供することができる。

 現在、宇野学派でほとんど唯一、現状分析を続けているといってもよい鎌倉孝夫氏(埼玉大学名誉教授)の考察が興味深い。鎌倉氏は、擬制資本をキーワードにして現代資本主義を読み解く。

 擬制資本は、利潤を生む生産資本を根拠に形成されるだけではない。その源泉は何であれ、一定の定期的収入が得られると、その収入はある元本が生み出した利子とみなされ(資本還元)、元本=擬制資本が形成される。土地、ビットコイン、株、高級時計などは擬制資本となりうる。そして、これら擬制資本がバブルを引き起こすことがある。

<バブルの維持には資金借入れ(資金需要)が不可欠なのに、バブル自体には何の資金形成の根拠がないから、これを継続すると必ず利子率は上昇し、これらの擬制的収入に基づく証券の価格を暴落させる。/この証券価格暴落を避けるには、利子率の引下げが不可欠だが、これは金本位制の下では実現できない。現代資本主義はこれを管理通貨制によって行いうるものとなったのであるが、それは、この証券の擬制性を補強するものでしかない限り、何ら問題を解決しえない>

 マルクス経済学の視点からすると高市首相が財政規律を緩めたのは、株式バブルを維持するための資金注入に過ぎず、利子率が上昇するという結果を必然的にもたらす。株式が擬制資本として、中心的機能を果たしている現代資本主義はシステムとして脆弱なのである。長期金利の上昇により、日本経済が大混乱に陥るような事態がいつ起きても不思議ではない。

 その契機となる要因のひとつが、日中間の偶発的武力衝突だ。日中関係を安定させることは経済的観点からも重要になる。 ★★★(2025年12月11日脱稿)

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