いま知っておきたい医療最前線 新書特集
「糖質リスク」石黒成治著
研究が進む医療の世界では、知らぬ間に以前の常識が覆っていたりすることが少なくない。ならば、一番ホットな情報を新書で手に入れてみてはいかが。今回は、血糖スパイクや腎臓移植などの知られざる世界から、健康診断の上手な活用の仕方や体を細胞レベルから解説した本まで、医療の今に追いつくための新書4冊をご紹介する。
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「糖質リスク」石黒成治著
ランチの後にはつい居眠りしてしまう──。そんな経験はないだろうか。実はコレ、体内で「食後高血糖」が起こっているサイン。よくあることと片づけがちだが、食後急激に血糖値が上昇する「血糖スパイク」が体内で生じると、心臓血管疾患やがん、腎臓や肝臓機能障害、さらに認知症のリスクが上昇するらしい。
本書は、多くの人が自覚しないまま放置している血糖の急上昇がもたらすリスクを、医学論文を基に説きつつ、いかに血糖変動をなだらかにするか、生活の中で取り組める具体的な方法を紹介したもの。
糖質への欲求を我慢で抑え込むより、腸内環境を整え、食べる順番や少しの運動の導入の方が無理なく効果を得られるという。おやつやアルコールとも共存できる手法を即取り入れたくなりそうだ。 (SBクリエイティブ 1100円)
「知の巨人、腎臓移植をする」佐藤優、石田英樹著
「知の巨人、腎臓移植をする」佐藤優、石田英樹著
2002年、拘置所収容時の血液検査で、慢性腎臓病の疑いという診断を受けた著者は、10年に腎機能低下の加速を告げられ、東京女子医大での血液透析をスタートさせた。当初は透析を受けつつ余命を生きるつもりだったが、妻から生体腎を提供したいという申し出を受けて心を揺さぶられる。本書は、手術を受ける決意に至った経緯と、23年に移植後透析なしの生活になるまでのメリット・デメリットを包み隠さずつづったもの。
主治医の石田英樹教授との対談では、日本の医療界の問題点にも切り込みつつ、移植コーディネーターの証言を盛り込んで倫理面の問題についても触れている。さらに、より良い医療を受けるための患者側の在り方にも言及。腎臓移植の今を、患者側・ドナー側・医療チーム側の各観点から総合的に教えてくれる。 (集英社インターナショナル 1111円)
「細胞を間近で見たらすごかった」小倉加奈子著
「細胞を間近で見たらすごかった」小倉加奈子著
生まれてから死ぬまで、人知れず絶えず働き続けているのが、体中の細胞たちだ。本書は、体の内側の世界をわかりやすい比喩とイラストで紹介している人体ツアーの書。「吸って吐いて『風かおる 呼吸器ツアー』」「これぞサバイバルツアー『免疫サファリパーク』」「どちらがお好き?『ハネムーン 生殖器ツアー』」など6ツアーに加えて、「これぞ秘境!『脳と脊髄、からだ遺産ツアー』」など7つのオプショナルツアーを提供。気管から肺胞まで迷子になりそうな23もの分岐がある気管支を抜けたり、男女差のある尿道で戸惑ったり、表皮ブドウ球菌に乗って命がけで白血球に対峙したり、酸性雨が降る膣内を通ったりしながら、知られざる体内の旅を楽しめる。
ツアコンさながらの著者に連れられて、ぜひ体内を旅してみよう。 (筑摩書房 1012円)
「健康診断でここまでわかる」伊藤大介著
「健康診断でここまでわかる」伊藤大介著
健康診断を受けていても意味がよくわからないと思うのなら、本書を手に取ろう。総合診療医の著者が、健康診断をフルに活用する方法を教えてくれる。
健康診断の目的は、命にかかわる病気を症状が出る前に発見し対処することにある。たとえば、腎機能の状態を知り早く対処するためにはクレアチンの数値が指標になるし、血管の状態を直接知るには眼底検査が有効だ。またC判定やD判定を甘く見ると即疾病につながることから、その際の具体的な対処法も紹介。
さらにお勧めのオプション検査として腹部超音波検査や便潜血検査を挙げているほか、精度の低さからエコー式の骨密度検査は受けなくてもいいのではなど、勧めないオプション検査も挙げている。日々進化している最新の健康診断の情報も得ることができる。 (文藝春秋 1276円)



















