著者のコラム一覧
影山貴彦同志社女子大教授

▽かげやま・たかひこ 同志社女子大学学芸学部メディア創造学科教授。1962年、岡山県生まれ。早大政経学部卒。86年に毎日放送入社、「MBSヤングタウン」ほかテレビとラジオの番組を手掛ける。ABCラジオ番組審議会委員長、GAORA番組審議会副委員長、日本笑い学会理事。著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」(実業之日本社)、「おっさん力」(PHP研究所)、「テレビのゆくえ」(世界思想社)など。

休演相次ぐ中…桂文珍の国立劇場独演会が開催された背景

公開日: 更新日:

抗議と圧力にはあらがえなかったか

 そんな中、東京事変のコンサートや桂文珍の独演会など、自粛ムードを覆して開催されたイベントを英雄視する声もあるが、それも違う。

 文珍さんの国立劇場で行われている独演会開催については「貸館」「共催」という点に違いがある。国は文化庁所管の博物館や美術館、劇場の閉鎖を要請し、国立劇場での3月15日までの“主催公演”の中止を発表しているが、同件は“小屋貸し”なので、中止がマストではない。また、主催は読売新聞社と吉本興業の共催。自社の劇場を全館休演にした吉本の単独主催ならば劇場に準じて休演となるであろうが、共催となると自社だけの判断とはいかないわけで、関西では2社の“あうんの呼吸”で進んだのではないか、と言われている。旧芸名・三枝(34)にちなみ、3月4日に開催する予定だった、文珍さんの兄弟子・桂文枝さんの「創作落語300作独演会」は、まさに直営劇場のなんばグランド花月だったために中止になったのである。

 くしくも3日の文珍さん独演会のゲストは桂文枝さん。生涯創作300作を掲げていた文枝さんにとっても3日の終演後に“5日以降の休演”が決定したというのもシニカルでもある。「公演は開催するが、来場できない人には払い戻しも対応する」という同公演の姿勢が自粛ムードに一石を投じてくれれば、と思っていたのだが……。やはり抗議と圧力にはあらがえなかったのだろう。

 とはいえ、背景を知らずに過剰な反応をしてしまうこと、そして送り手側も冷静さを失いつつある今の状況は、エンタメ界にとって憂慮すべき事態に思えてならない。

(構成=岩渕景子/日刊ゲンダイ

【連載】エンタメ界激震 コロナショック

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  5. 5

    巨人正捕手は岸田を筆頭に、甲斐と山瀬が争う構図…ほぼ“出番消失”小林誠司&大城卓三の末路

  1. 6

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  2. 7

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    「ばけばけ」苦戦は佐藤浩市の息子で3世俳優・寛一郎のパンチ力不足が一因