著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

「本名の白羽秀樹では出られない。ましてや“城哲也”では絶対出られない」

公開日: 更新日:

 1966年4月11日、日本で初めてのキックボクシングの大会が開かれた。資金繰りに苦しんでいた野口修は、大阪のプロモーターに300万円で興行権を売っていた。それもあって記念すべき第1回の大会にもかかわらず、会場は東京ではなく大阪府立体育会館で行われた。

 当初、この大会は大山倍達率いる極真空手と、老舗の実戦空手流派である日本拳法空手道の協力を得て行う計画だった。しかし、金銭面のもつれや感情の行き違いからいずれも交渉は決裂。主要選手の出場が白紙になってしまう。本来なら中止を決断するところだが、興行権を売ってしまっている以上、中止となれば300万円の弁済が発生するのはもちろん、膨大な違約金を負わねばならない。そこで野口修は、苦肉の策で無名の青年である白羽秀樹を抜擢する。派手な蹴り技は見栄えがいいし、俳優として舞台経験もある。人前に立つことに免疫があると野口は踏んだのだ。

 とはいえ、プロ試合どころか、大会場もリングもすべて未知の経験である。当然白羽は、首肯しなかった。何度頼んでも答えは同じ。そこで野口は「頼む、俺を助けると思ってこの1回だけ出てくれ」と泣きついた。それが効いてか「だったら条件がある」と白羽は言った。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 2

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  4. 4

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  5. 5

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    今度は横山裕が全治2カ月のケガ…元TOKIO松岡昌宏も指摘「テレビ局こそコンプラ違反の温床」という闇の深度

  3. 8

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    大谷翔平のWBC二刀流実現は絶望的か…侍J首脳陣が恐れる過保護なドジャースからの「ホットライン」