「ちいさな手のひら事典 聖人」クリスティーヌ・バルリーほか4人著 いぶきけい訳

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「ちいさな手のひら事典 聖人」クリスティーヌ・バルリーほか4人著 いぶきけい訳

 キリスト教に馴染みのない人でも、聖母マリアの夫である大工のヨセフや、天国の鍵を持っている聖ペトロ、聖女ジャンヌ・ダルクらの聖人の名はご存じだろう。しかし、2000年に及ぶキリスト教の歴史の中には、それ以外にも多くの聖人たちがいる。

 本書は、信仰を貫き、時にその身を捧げ、殉教して聖人となった人々の功績やエピソードを紹介するビジュアルブック。

 聖女アガタは乳母の守護聖人。3世紀、シチリア島の貴族の家に生まれたアガタは、異教徒の島の総督との結婚を拒絶。拷問され乳房を切り落とされても信念を貫いたが、度重なる拷問で息絶えた。1年後、火山の噴火で火に襲われた町の住人がアガタの墓を覆う亜麻布にすがりつくと奇跡が起き、島が守られたという。そして聖ペトロによって治癒した乳房にちなんで乳母の守護聖人となった。

 文書・図書館員の守護聖人、聖ラウレンティウスは、調理師や肉のロースト係の守護聖人でもある。理由は、教会の財産を狙うローマ皇帝ウァレリアヌスの怒りを買い、熱した鉄格子の上で網焼きにされたからだ。ゆえにその姿は、焼き網とともに描かれている。

 ほかにも、信仰を翻すよう求められ歯を抜かれて殉教したために歯科医とその患者の守護聖人となった聖女アポロニア(歯を抜くためのペンチを手にした姿で描かれる)や、高貴な家に生まれ、裕福な生家を出て、物乞いをしながら祈りの日々を送った、物乞いの守護聖人・聖アレクシウスら91人の聖人を収録。

 聖人たちの姿を紹介する図版は、約100年前に企業の広告や販促用に多色刷り石版印刷でつくられたクロモカード。そのレトロな絵柄が、また聖人たちの一途な信仰心を際立たせる。クリスマスにぴったりの一冊だ。 (グラフィック社 1980円)

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