著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

NHK「倫敦ノ山本五十六」は新たな歴史像の構築に挑んだ秀作だ

公開日: 更新日:

 大量のお笑い番組。怒涛のようなドラマ一挙放映。年末年始のテレビはエンタメ一色だった。そうなると、少し違ったものが見たくなる。昨年12月30日に放送された、太平洋戦争80年・特集ドラマ「倫敦ノ山本五十六」(NHK)は最適な一本だった。主演は香取慎吾

 山本五十六といえば、言わずと知れた「連合艦隊司令長官」である。しかし、このドラマがスポットを当てたのは司令長官となる5年前。1934年に行われた第2次ロンドン海軍軍縮会議予備交渉に、海軍側首席代表として参加した山本の葛藤と苦闘だ。

 当時の海軍は強気一辺倒。英米に有利な軍縮など屈辱でしかなかった。だが、山本は知っている。このままでは戦争へと突入し、必ず負けることを。目指したのは「平和と誇りの両立」だった。

 軍縮条約を利用して開戦を避けようとする山本。納得しない軍上層部。結局、条約は成立せず、皮肉にも山本は国民的英雄へとまつり上げられる。複雑な心境の山本を、香取が丁寧に演じていく。

 山本が唯一、心を許せたのが海軍兵学校同期で親友の堀悌吉(片岡愛之助)だ。山本から届いた多数の書簡を保存していた、実在の堀。そこには、やがて真珠湾攻撃を企図する山本の苦悩が記されていた。この第一級史料も踏まえ、脚本の古川健と演出の大原拓ら制作陣が、新たな歴史像の構築に挑んだ秀作だ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  2. 2

    悠仁さま筑波大進学で起こる“ロイヤルフィーバー”…自宅から1時間半も皇族初「東大卒」断念の納得感

  3. 3

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  4. 4

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 5

    飯島愛さん謎の孤独死から15年…関係者が明かした体調不良と、“暗躍した男性”の存在

  1. 6

    結局「光る君へ」の“勝利”で終わった? 新たな大河ファンを獲得した吉高由里子の評価はうなぎ上り

  2. 7

    中山美穂さん急死、自宅浴槽内に座り前のめり状態で…大好きだった“にぎやかな酒”、ヒートショックの可能性も

  3. 8

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  4. 9

    タラレバ吉高の髪型人気で…“永野ヘア女子”急増の珍現象

  5. 10

    【独自】急死の中山美穂さん“育ての親”が今朝明かしたデビュー秘話…「両親に立派な家を建ててあげたい!」

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    JリーグMVP武藤嘉紀が浦和へ電撃移籍か…神戸退団を後押しする“2つの不満”と大きな野望

  2. 2

    広島ドラ2九里亜蓮 金髪「特攻隊長」を更生させた祖母の愛

  3. 3

    悠仁さまのお立場を危うくしかねない“筑波のプーチン”の存在…14年間も国立大トップに君臨

  4. 4

    田中将大ほぼ“セルフ戦力外”で独立リーグが虎視眈々!素行不良選手を受け入れる懐、NPB復帰の環境も万全

  5. 5

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  1. 6

    FW大迫勇也を代表招集しないのか? 神戸J連覇に貢献も森保監督との間に漂う“微妙な空気”

  2. 7

    結局「光る君へ」の“勝利”で終わった? 新たな大河ファンを獲得した吉高由里子の評価はうなぎ上り

  3. 8

    飯島愛さん謎の孤独死から15年…関係者が明かした体調不良と、“暗躍した男性”の存在

  4. 9

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  5. 10

    中日FA福谷浩司に“滑り止め特需”!ヤクルトはソフトB石川にフラれ即乗り換え、巨人とロッテも続くか