著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

東大前刺傷事件で思う 偏差値はロクでもない人間選別飼育システムだ

公開日: 更新日:

 少年が何かやらかすと思っていた。受験生があれだけ集合する日なら、何か面倒なことが起こるんじゃないかと疑っていたら、その通りになってしまった。大学入学共通テストの日、東大の前で17歳の少年が受験生らを無差別にナイフで刺した。岸田政権が18歳以下の子に配るはずの10万円がガタ遅れしてるので、何さらしとんじゃ、いい加減にせえと食い詰めた少年がやったわけではない。

 受験勉強の成績が上がらなくて自信をなくし、「東大に入れなくて医者になれないなら人を殺して切腹しようと思ってた」と言ったのだ。まったく前方後方視界ゼロのガキ高校生だ。自分の学校名と偏差値まで名乗って、「来年、東大に受験だ!」と声を張り上げたとか。まるで戦国時代の武士もどきだ。でも、未来視界ゼロのこのガキにはそこが戦場の土壇場だったのだ。「こいつの17年間の不憫な人生は『偏差値』だけだった」と友人が言ったが、偏差値を叫んで殺しにかかるとは、そいつにはスマホの戦闘ゲームみたいなものだったのか。

 偏差値はほんとにロクでもない人間選別飼育システムだ。我ら60年代末の高校時代にはそんないかがわしい選別教育はなかった。大学に進みたいヤツはどんな成績だろうと誰でも東大に京大にヘチマ大学、好きなところに受験できて当たり前だった。そもそもが「偏差値」とは、ガキのドタマの賢さアホさがその集団の平均値からどれほど隔たっているかを数値で計量し、ある日ある時の脳ミソの一部の調子を等級で分けてしまうものだ。“偏差値”が教育現場に導入されたのは、実は68年の全共闘運動の先駆けとなった東大の安田講堂占拠闘争で何千人もの機動隊が動員されたものの、政府が大学管理に危機を感じたからだそうだ。社会主義革命を企てて政権崩壊を狙う学生たちをつくらないように、高校のうちから、国家に盾つくような者を等級分けで管理しておこうということらしいのだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  2. 2

    中森明菜が16年ぶりライブ復活! “昭和最高の歌姫”がSNSに飛び交う「別人説」を一蹴する日

  3. 3

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  4. 4

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  5. 5

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ

  1. 6

    永野芽郁「二股不倫」報道で…《江頭で泣いてたとか怖すぎ》の声噴出 以前紹介された趣味はハーレーなどワイルド系

  2. 7

    永野芽郁“二股肉食不倫”の代償は20億円…田中圭を転がすオヤジキラーぶりにスポンサーの反応は?

  3. 8

    田中圭が『悪者』で永野芽郁“二股不倫”騒動はおしまいか? 家族を裏切った重い代償

  4. 9

    永野芽郁「二股不倫報道」の波紋…ベッキー&唐田えりかと同じ道をたどってしまうのか?

  5. 10

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  2. 2

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  3. 3

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  4. 4

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 5

    広島・大瀬良は仰天「教えていいって言ってない!」…巨人・戸郷との“球種交換”まさかの顛末

  1. 6

    広島新井監督を悩ます小園海斗のジレンマ…打撃がいいから外せない。でも守るところがない

  2. 7

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  3. 8

    令和ロマンくるまは契約解除、ダウンタウンは配信開始…吉本興業の“二枚舌”に批判殺到

  4. 9

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意

  5. 10

    永野芽郁「二股不倫」報道でも活動自粛&会見なし“強行突破”作戦の行方…カギを握るのは外資企業か