是枝裕和監督の最新話題作「ベイビー・ブローカー」が投げかける“家族”とは何か

公開日: 更新日:

 是枝監督といえば「万引き家族」(18年)でカンヌ映画祭の最高賞パルムドールを獲得したのが記憶に新しい。最新作「ベイビー・ブローカー」(公開中)は、「万引き家族」の翌年にパルムドールを受賞した「パラサイト 半地下の家族」(19年)の主演俳優ソン・ガンホらを主演に迎えた、監督初の韓国映画だ。いわば日韓映画界のドリームチームによる話題作で、今年のカンヌ映画祭でも見事ソン・ガンホに韓国初の主演男優賞をもたらすなど2冠を達成した。

 舞台は韓国のとある施設にある赤ちゃんポスト=ベイビーボックス。そこに我が子を捨てにきた若い女性ソヨン(イ・ジウン)と、ベイビーブローカーの裏の顔を持つクリーニング店主サンヒョン(ソン・ガンホ)らが、ひょんなことから赤ん坊の養父母を探す旅にでるロードムービーだ。

「単純な善悪の構図ではなく、登場人物すべてにのっぴきならない事情があります。苦しみと生きにくさを抱えた彼らが旅を続けるうち、やがて疑似的な家族のようになっていく展開は、さまざまな形の“家族”を描き続けてきたまさに是枝節です。ソン・ガンホらが醸し出す人間味が心に染みる人情ドラマでもありますが、とくに涙なしには見られないのが、ソヨンが我が子をなぜ捨てるのか告白する観覧車のシーンです。自助やら自己責任論がまかり通る昨今、生まれてきた事そのものに価値を見いだす本作のゆるぎない価値観には強く共感します」(前田氏)

 くしくも、いま世界を二分するテーマに波紋を投げかける形になった是枝監督の最新作。6月26日には主演のソン・ガンホらが来日し、舞台挨拶を行い、興行的にも「トップガン」「ドラゴンボール超」に続く3位と好スタート。賛否を含め、大きな話題となりそうだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  2. 2

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  3. 3

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

  4. 4

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  5. 5

    広末涼子「実況見分」タイミングの謎…新東名事故から3カ月以上なのに警察がメディアに流した理由

  1. 6

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  2. 7

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  3. 8

    『ナイアガラ・ムーン』の音源を聴き、ライバルの細野晴臣は素直に脱帽した

  4. 9

    初当選から9カ月の自民党・森下千里議員は今…参政党さや氏で改めて注目を浴びる"女性タレント議員"

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」