著者のコラム一覧
山田勝仁演劇ジャーナリスト

「文、分、異聞」63年の文学座の“黒歴史”を直視した意欲作に物足りなかったこと

公開日: 更新日:

文学座アトリエ公演「文、分、異聞」(作=原田ゆう、演出=所奏)

 1963年に起きたいわゆる「喜びの琴事件」を題材にした作品。これは、当時、文学座の座付き劇作家だった三島由紀夫の戯曲「喜びの琴」の上演をめぐって内部対立、劇団員が大量脱退した「黒歴史」ともいうべき事件だ。

 中国公演から帰国したばかりの杉村春子は強硬に反対し、三島を支持する松浦竹夫らといったん保留にしたいという戌井市郎らの三極に分かれた。

「喜びの琴」は近未来の管理国家・日本を舞台に、反共思想に凝り固まった若い公安巡査を主人公にした政治色の強い作品であり、劇中で起こる「列車転覆事件」は松川事件を連想させた。

 松川事件は大量首切りに反対する国鉄労働者の犯行とされたが、冤罪が確定したばかりだった。

 反対派は戯曲そのものに「反共」のにおいを嗅ぎ取り、「労演(勤労者演劇協会)」の上演拒否を恐れた。労演は劇団の最大支援団体だ。

 芸術至上主義を掲げて、特定の思想にくみしないことが文学座旗揚げの大原則だったが、皮肉にもこの内紛は「思想」問題をあぶり出したのだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  2. 2

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  3. 3

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  4. 4

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  5. 5

    長嶋一茂は“バカ息子落書き騒動”を自虐ネタに解禁も…江角マキコはいま何を? 第一線復帰は?

  1. 6

    嵐ラストで「500億円ボロ儲け」でも“びた一文払われない”性被害者も…藤島ジュリー景子氏に問われる責任問題

  2. 7

    独立に成功した「新しい地図」3人を待つ課題…“事務所を出ない”理由を明かした木村拓哉の選択

  3. 8

    27年度前期朝ドラ「巡るスワン」ヒロインに森田望智 役作りで腋毛を生やし…体当たりの演技の評判と恋の噂

  4. 9

    "お騒がせ元女優"江角マキコさんが長女とTikTokに登場 20歳のタイミングは芸能界デビューの布石か

  5. 10

    長女Cocomi"突然の結婚宣言"で…木村拓哉と工藤静香の夫婦関係がギクシャクし始めた

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    横綱・大の里まさかの千秋楽負傷休場に角界から非難の嵐…八角理事長は「遺憾」、舞の海氏も「私なら出場」

  3. 3

    2026年大学入試はどうなる? 注目は公立の長野大と福井県立大、私立は立教大学環境学部

  4. 4

    東山紀之「芸能界復帰」へカウントダウン着々…近影ショットを布石に、スマイル社社長業務の終了発表か

  5. 5

    「総理に失礼だ!」と小池都知事が大炎上…高市首相“45度お辞儀”に“5度の会釈”で対応したワケ

  1. 6

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  2. 7

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  3. 8

    義ノ富士が速攻相撲で横綱・大の里から金星! 学生相撲時代のライバルに送った痛烈メッセージ

  4. 9

    同じマンションで生活を…海老蔵&米倉涼子に復縁の可能性

  5. 10

    独立に成功した「新しい地図」3人を待つ課題…“事務所を出ない”理由を明かした木村拓哉の選択