『オール・マイ・ラヴィング』日本人好みの超ド級のポップかつ胸キュンソング
『オール・マイ・ラヴィング』
アルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』の発売の前に『フロム・ミー・トゥ・ユー』『シー・ラヴズ・ユー』(ともに1963年)という強力シングルが発売されたこともあったからか、『ウィズ~』からはイギリス、アメリカともにシングルがカットされなかった。
それゆえアルバムとして、やや地味な印象となるのだが、もしこのアルバムからシングルを切るとすれば、選ばれるのは真っ先にこの曲だろう(事実、日本ではシングルカットされた)。
ジョンが多くの曲でリードボーカルを取る『ウィズ~』の中、ポールは、この曲1曲で、ジョンとタイマンを張っているような感じがする。
キュートで人懐っこい超ド級のポップソング。後のポール作品で言えば、例えば『ハロー・グッドバイ』(67年)の源流とでもいうべきだろう。
コード進行も日本人好み。何ともJポップっぽいのだ。例えばキーがEなのに「F♯m」から入るところなんて、昨今のJポップの常道。
さらにサビ(再生時間「0:50」から)の半音ずつ下がっていくコード進行(コーラスのいちばん下のジョージが歌うパートに注目)なんてまさにJポップ(専門用語で「クリシェ」といいます)。
さらには歌詞もまた胸キュンなラブソング。大昔に買ったCDの歌詞カード(対訳:内田久美子)では「オール・マイ・ラヴィング」が「ありったけの愛」と訳されている。うまい。
演奏では、ジョンによる「♪チャカチャ・チャカチャ」という三連符の速いコードカッティングが名演としてよく語られる(試聴リンク、左チャンネルに注目)。確かに、これ、簡単そうでやってみるとなかなか難しい。ピックを持つ右手首の柔軟性が大事。リウマチ予防のいい運動になりそう。
ただ、それよりもジョージの軽やかなギターソロ(試聴リンク「1:01」から)を、もっとほめてやれよとも思う。うーむ、初期ビートルズを語るということは、ジョージを温かい目で応援したくなるということだ。
ボーカルで注目は「1:14」からのポールの1人ハモリ。ここは、上も下もポールの声。初心者向け「声に出してハモりたいビートルズメロディー」の代表といっていい。
ここからビートルズは、声や楽器を何重にも重ねて重ねて重ねてまいります。彼らの音楽性の進化は、録音技術の進化と軌を一にしている。そのあたりを今後、見ていきたいと思う。
それにしても日本人好みの曲だ。誰かカバーすればいいのに。タイトルは「ありったけの愛」で。
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