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北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

映画で理解するパレスチナ問題(前編)「アラビアのロレンス」は今こそ鑑賞価値がある名作

公開日: 更新日:

 アラブ部族間の争いも絶えず、政治の矛盾に翻弄されたロレンスは失意のうちに帰国し事故死する。ロレンスはアラブ独立運動の英雄か、はたまた帝国主義の徒花か。毀誉褒貶相半ばするが、世界大戦の敗者となったドイツ帝国やオスマン帝国はいずれも滅亡している。国の存亡を懸けた戦時の外交を、単純に「三枚舌外交」と批判するだけでは済まない側面もあるが、近代パレスチナ問題を生んだ端緒となったことは間違いない。

 静謐な砂漠を舞台として歴史の大波に翻弄される一人の英国人を描いた「アラビアのロレンス」は映画史に燦然と輝く「不朽の名作」の代名詞だ。上映時間は227分と長大だが、今だからこそ鑑賞する価値がある。

■「2度目の独立戦争」の背景

 その後パレスチナは国際連盟決議に基づく英国の委任統治時代を迎え、ユダヤ人が相次いで入植し、アラブ人との摩擦が高まっていく。第2次世界大戦中のユダヤ人はスティーブン・スピルバーグ監督「シンドラーのリスト」(93年)が描いたように、ナチスによる大量虐殺(ホロコースト)という悲劇を経験する。

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