「地下鉄駅」何致和著、及川茜訳

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「地下鉄駅」何致和著、及川茜訳

 主人公は、地下鉄会社の運行管理課の主任・葉育安、45歳。地下鉄に飛び込む人が出るたび、早く電車を復旧させる業務を行う日常を送っている。凄惨な現場を何度も目撃してストレスを抱えつつも、作業手順通りに各種手配して現場を片付けさせ、ショック状態に陥った事故車両の運転手を慰め、代わりの運転手を手配する日々。一方プライベートでは、離婚後に一緒に住んでいる認知症の母と思春期の娘との間で神経が休まらない。そんな状況が続いていたある日、彼は自殺防止プロジェクトの長に任命され、飛び込み防止の有効なプランを考えることを余儀なくされる。啓発ポスターや美男美女のポスターの張り出しなど、あらゆる方策を試してみるのだが……。

 台湾の社会派小説の旗手として活躍する著者の初邦訳本。ギャンブル依存の男、SNSで失恋をさらされた中学生など、自殺した人々の独白を挟みながら、ストレスフルな主人公の日々がつづられていく。作中、主人公は日本の人身事故の多さにも触れている。国境を超えて、ままならない日々を送る人々への温かな目線が伝わってくる。

 (河出書房新社 3080円)

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