【ヴィヴァルディと私】音楽家の師弟物語に潜む“人身売買”の衝撃

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チェチリアは世界と自分を隔てる壁の向こうに自由を求めた

 製作国はイタリアとフランス。ヨーロッパ映画だけに淡々と物語が語られる。孤児院の暮らしの中で抑圧されたチェチリアと、彼女の才能を見出し、自己の音楽を大成しようと努めるヴィヴァルディ。分かりやすく言えば、男と女の師弟関係を描くストーリー。スポ根ドラマならぬ音楽根ドラマだ。そこに女性同士の妬みやピエタ院の厳しい掟、貴族のエゴなどが幾重にも重なってドラマを重厚に味付けしている。

 特に注目したいのが当時の孤児院の経営体質だ。金持ち貴族のご機嫌を取ってスポンサーになってもらい、その寄付に依存しなければならない。

 そのため収容されている少女たちは軍人など貴族の妻になる運命を背負っている。施設の幹部は彼女らを商品のように貴族に売り渡すのだ。見た目のさえないオッサン貴族に嫁がされる少女が哀れ。チェチリアもまたそうした“人身売買”の犠牲者として運命づけられていた。

 本作を手がけたダミアーノ・ミキエレット監督はこう語っている。

「イマジネーションを形にし、音楽を奏でることで名声がもたらされる――これこそヴィヴァルディが追い求めたものだったが、チェチリアには違っていた。音楽を通して世界を想像するだけでは満足できなかった。彼女は、世界と自分を隔てる壁の向こうに自由を求めたのだ」

 いつの時代も弱い者が虐げられる。ピエタ院の少女たちもそうした歴史の犠牲者だ。本作を見終わったとき、筆者は3月17日にトランプとネタニヤフが行ったイランの女子小学校爆撃で175人の児童らが殺された悲劇を思い出した。(配給=彩プロ)

(文=森田健司)

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