物価高ニッポン(1)起こるべくして起きたインフレ「インフレの時代」渡辺努著
いきなりのインフレで家計は火の車。しかし世間にはインフレ歓迎の議論もある。
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「インフレの時代」渡辺努著
長年のデフレで苦しんだ日本にインフレの大雨が降り始めている。果たして、これでいいのか──。誰もが抱く不安だろうが、東大名誉教授の著者は「インフレは日本にとって前向きな変化である」と言い切る。
著者によればインフレは「起こるべくして起きた」変化だ。1990年代、日銀に勤務していた著者はIMF(国際通貨基金)が進める中央銀行制度改革のプロジェクトで海外を頻繁に訪ねていた。それはグローバル化の推進であったが、いま振り返ると賃金と物価に強い下押し圧力がかかり、外国からの安い輸入品に勝てなくなったアメリカの国内産業では失業が相次いで経済格差が広がった。これがトランプ登場と高関税政策という帰結につながったのだ。
日本では労働者の賃金を極力抑えることで中国企業に対抗するという独自のやり方を選んだが、賃金据え置きが当たり前になった結果、購買力は伸びず企業は価格を上げられない。つまり慢性デフレという病に陥った。こうしたグローバル化の負の局面を脱出するのが今回のインフレ。そう著者は見る。
懸念のひとつは物価上昇に賃上げが追い付かず、実質賃金が低下すること。しかし著者は「深刻とは考えていない」ときっぱり。時間がたてば改善すると楽観的だ。果たしてそうか? かえって深い懸念を抱く読者も少なくないかもしれない。
(中央公論新社 1320円)



















