【隣人たち】不幸な事故がもたらす女2人の理性の崩壊

公開日: 更新日:

静かな情景に女性2人の感情が火花バチバチに染まる

 何でも打ち明けられる親友同士の2人の女。ところが1人が不幸に見まわれるや、その精神的ショックが肥大化してもう1人に伝播する。かくして女2人が揃って錯乱し、対立していく。メガホンを取ったブノワ・ドゥローム監督が「物語は郊外のドラマから、まさにヒッチコック的なスリラーへと移行します」と語るように、映画はアルフレッド・ヒッチコック的手法で葛藤と恐怖をジワジワと描きあげている。

 アリスはマックスの転落を防ごうとしたが、それを果たせず自分を責める。さらにセリーヌの行動に悪意を見出だすことに。ある意味で息子を失ったセリーヌよりも不幸に染まっていくわけだ。そうした深刻な状況を夫たちは理解できない。

 ハサウェイとチャステインの演技が素晴らしい。静かな情景に女2人の感情が火花バチバチに染まり、狂気の泥沼に沈んでいく。

 本作を見ていると、人間は疑心暗鬼の生き物だと痛感してしまう。隣人と共存することの難しさ、登場人物の理性のもろさなどを目の当りにしながら、「ああ、人間はこうやって壊れていくのだな」とため息が出そうだ。

 そのカタストロフィーの先には意外な結末が待っているのだが、物語の流れから「実際にありえる」と妙に納得してしまう。人はみな、ガラスの心で生きているのだ。見終わったとき「ローズマリーの赤ちゃん」(68年)と「赤ちゃんよ永遠に」(72年)を思い浮かべたのは筆者だけだろうか。(配給=ギャガ)

(文=森田健司)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦は大関復帰10勝での「休場」に現実味…天敵・大の里に初勝利も素直に喜べない理由

  2. 2

    暫定措置は7月で終了へ…「資格確認書」「マイナ保険証」迫るタイムリミットの対処法

  3. 3

    目黒蓮不在のSnow Man、ラウールが"次期エース"へ台頭か「めめラウ」が与え合う影響

  4. 4

    北陸新幹線の延伸ルート「桂川案」に決定でも難航必至…問題解決の奇策「フリーゲージトレイン」の可能性を考えてみた

  5. 5

    阿部慎之助氏の巨人監督復帰が絶望的なワケ…親会社が断固として許さない暴力行為の重み

  1. 6

    安青錦が丸ごと吐露…相撲との出会い、日本語習得、「腹違いの兄貴」

  2. 7

    ウルトラセブンで主演の森次晃嗣さん「ずっと“モロボシ・ダン”と見られるのが嫌だった…」

  3. 8

    佐々木朗希また抹消…中6日も守れない“ひ弱な怪物”をそれでも全30球団が欲しがったワケ

  4. 9

    「24時間テレビ」放送1カ月前に日テレ局内に流れる微妙な空気…猛暑の中の星野真里マラソンに大逆風

  5. 10

    「働いて×5」では?…支持率急落の高市首相「睡眠不足」「家事多忙」SNSでアピールのトンチンカン