著者のコラム一覧
増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

萩本欽一〈44〉松居直美の芸能界引退宣言をひっくり返した“インチキ大芝居”「社長を泣かせれば大丈夫」

公開日: 更新日:

 作家増田俊也氏による連載、各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。待望の第2弾は、「視聴率100%男」として昭和のテレビ界を席巻したコメディアンの萩本欽一氏です。

  ◇  ◇  ◇

萩本「松居直美ちゃんが俺んとこ来て『もう嫌になったから芸能界を引退します』って泣いてるの」

増田「それは『欽ドン!』のずっと後ですか」

萩本「うん。あれが当たって何年も経ってから。直美ちゃんは結婚して子供もいたから。そのとき俺またね、インチキな話したんだよ。俺ああいうとき良いストーリーを考えつくの。テレビの台本よりもいい本書く。直美が言うのさ。幼稚園行ったら、有名人だからまわりの人にいろいろ言われるんです、って。それに、結婚したけどなんか幸せ感がなくて離婚したくなってきて。雑誌とかにもいろいろ書かれて、もう生きてる気がしないって言うんだ」

増田「追い詰められて辞めたいという」

萩本「そうそう」

増田「萩本さんに」

萩本「そう。それで『辞めるんで、ありがとうございました』って来たから『うん。あーそれなら気持ちよく辞めた方がいいよ』つったの。『気持ちよく辞めなさいね、大丈夫だよ』って。で、帰ろうとした直美ちゃんを呼び止めて、『ちょっと待って、直美ちゃん、これからなんか仕事決まってんの?』って聞いたら『これから探す』って答えるからさ。『これから探すの? あなた今ね、たとえばモノマネやって人前で歌うと30万円ぐらい出てるでしょう。ちょっといいとこだと50万円くらい。事務所に半分取られても25万円。1日で25万円の仕事を探しても無理だよ。普通は直美ちゃんの年齢で1カ月まるまる働いて18万円ぐらいじゃない? それを思い出した方がいいよ』と。そしたら『だけど辞めるってもう事務所の社長に言っちゃったし、今更やっぱり辞めないなんて言えないし』って言う。ファクスがテレビ局中に行っちゃったと。だからもう戻れないって」

増田「そうですね」

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