「社喰い」片田江康男著│すべての関係者が非を認めず当事者意識も欠如
「社喰い」片田江康男著
2024年10月24日、船井電機が突如、破産した。約300億円の会社資金流出も明らかになった。1961年に創業、FUNAIブランドを築いた名門企業がなぜこんなことになったのか。「週刊ダイヤモンド」の記者である著者は、取材を開始する。後継者問題に悩んでいた船井電機は、2021年、M&Aによって上田智一氏率いる秀和システムの子会社となった。外資コンサル出身で破産前日まで船井電機の社長を務めた上田氏をはじめ、取締役、M&A関係者ら主要人物が実名、顔写真入りで取材に応えている。仮名、匿名を含む多くの関係者への聞き取りから見えてきたのは、人間の欲深さだった。
本作は近年盛んに行われているM&Aのグレーゾーンに踏み込んだノンフィクション。いくつかの事例からその実態が見えてくる。船井電機はさまざまな思惑を持った取締役が入り乱れた挙げ句、破産した。その過程で買収した脱毛サロンのミュゼは、船井電機の資金をさんざん喰った挙げ句、会社分割やクーデターの末に破綻した。また、ルシアンHDとマイス社は中小企業の買収を繰り返し、その多くを経営難に陥れた。やり手ビジネスマンの顔をして会社を売り買いする者たちは、その会社で働き、生活を築いてきた従業員のことなど念頭にない。
長く企業取材をしてきた著者の目に、これらの事例は前代未聞のカオスと映る。この取材を通して気づいた共通点は、ほぼすべての関係者が自分の非を認めていないこと、無責任で当事者意識が欠けていることだった。
最終章で著者は、買い手企業、売り手企業、両者をつなぐM&A仲介会社の3者が共犯関係にあると指摘する。カネを吸い上げたい不適切な買い手企業、売り抜けて逃げ切りたい売り手企業のオーナー、手数料第一主義のM&A仲介会社。3者が持ちつ持たれつ、それぞれの欲で動いている。
そもそもM&Aは、中小企業の後継者不足を解消する有効な手段として注目された。だが、現実はそんなきれいごとではない。社喰いは現在進行中なのだ。 (ダイヤモンド社 1980円)



















