著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

世界の熱狂は「遠心力パロディスト」のごった煮ポップスのせい

公開日: 更新日:

その後のビートルズ~ポール・マッカートニー①

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 今あらためてビートルズ、特に後期作品を聴いて驚くのは、ポールの圧倒的な存在感である。その存在感を一言で表現すれば「遠心力」。

 対するジョンとジョージは「求心力」だ。1960年代後半という激動の時代のうねりを自らつくり出し、もしくはのみ込まれる形で時代性を求心的に突き詰めていく。平たくいえば、小難しくなっていく。

↓………ここから続き………

 ただ、この連載で何度も書いたように、そんな彼らの作品も最終的にはポップになってしまうのが、彼らの「業」だと思うのだが。

 そんなジョンとジョージに対して、ポールが遠心力を繰り広げる。時代と隔絶していた、とまでは言わないが、時代性より音楽性に立脚し、遠心力を利かせて、広大な音楽の面積を耕していく。

 ロックンロールを中心に、リズム&ブルース、ジャズ、フォーク、クラシック……いってみれば地球上のすべての音楽を我が物、ビートルズの物として開拓する。

 という「遠心力ポール」は、つまるところ「パロディスト」だったのだと思う。リズム&ブルース、ジャズ、フォーク、クラシックのパロディーとしてのビートルズの首謀者。

 パロディーというと軽薄な響きになるが、ビートルズ、特にポールが優秀なパロディストだったからこそ、リスナーは、ビートルズを扉として、世界の音楽を学んでいくことが出来たのだ。

 そう考えると、パロディスト・ポールの功績は劇的に巨大である。

 そしてビートルズ解散後のポールは「遠心力パロディスト」としての腕前をいかんなく発揮して、世界で最も成功した音楽家になっていった。

 さて。ビートルズも含め、世界中の人々、特に若者が熱狂してきた「あの音楽」は何というジャンル名なのかと考えることがある。

 一時期は世界的に「ロック」が幅を利かせていた。日本では「ニューミュージック」、その後は「Jポップ」か。

 でもトータルで見れば結局「ポップミュージック/ポップス」というふわっとした言葉に落ち着かざるを得ない。なぜか。それが、さまざまな音楽のごった煮だから。

 ということは「あの音楽」をふわっとさせた張本人は、世界で最も成功したポップ音楽家であるポールなのではないか。

 彼が「遠心力パロディスト」だったからこそ、ごった煮で雑食で痛快なポップミュージックが、かつて、そして今でも人々をしびれさせているのだと思う。

 そう、あれもこれも、みーんなポール・マッカートニーのせいさ。

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【連載】スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ

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