「ディスカバード・ジャパン」大木茂著│鉄道写真が引きはがすこの国の仮面

公開日: 更新日:

「ディスカバード・ジャパン」大木茂著

 タイトルから「日本再発見」の本かと思いきや、「ディスカバード」(カバーを外す)、つまり、この国の仮面をはがすことを意図した本だという。

 鉄道ファンだった著者は、高校1年から足かけ10年(1963~72年)、全国を旅して蒸気機関車を撮影。それから半世紀後、古希を目前にして再び足かけ10年(2016~25年)をかけて、同じ場所から撮影をするため全国を巡った。

 半世紀ぶりに再訪して目にした光景は、甘い感慨を吹き飛ばしてしまうほど衝撃的だったという。多くの場所が「荒廃」していたからだ。かつての美田は耕作放棄地に、手入れが行き届いていた里山はヤブだらけ、そして発展・成長の名のもとに無秩序に広がる住宅や工場用地、さらに空き家の増加など、変化の大きさに驚かされたという。

 著者を愕然とさせた風景の一つが、北海道・釧網本線の緑駅だ。林業が盛んだった地で、68年3月に撮影した写真には、切り出された木材が並ぶ線路わきの貯木場や製材所、それを運び出すため先頭と最後部に連結された蒸気機関車C58の雄姿が写っている。

 60年後、以前の面影はどこにもなく、1両編成のディーゼル車が走っているだけだ。

 他にも、大勢の通勤通学客でにぎわう70年11月の山形県米坂線手ノ子駅の風景。22年10月の再訪時には、当時2本あったホームも線路も1本だけの、列車交換もできない駅になっていた。おまけに2カ月前の豪雨で不通となり、復旧のめども立っていない。

 北海道の稚内から九州・鹿児島まで約300地点、スナップなども含めて今昔1000枚近い写真に当時のエピソードや解説を添えて紹介。

 鉄道写真が日本の半世紀の歩みは何だったのかを読者に問いかける。 (現代書館 7700円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎「90歳の選択」…都内の大豪邸からホテル住まいで前向き生活

  2. 2

    (3)阪神・藤川監督の「恐怖政治」に辟易、次々逃げ出す腹心コーチ…試合中の罵声は相手ベンチまで到達

  3. 3

    萩本欽一〈55〉仮死状態で生まれた三男、「視聴率30%と交換してくれ」と星空に願ったら…

  4. 4

    (2)佐藤輝明は阪神から抜け出したかったのか? メジャー挑戦に拍車をかけた“選手管理”への疑念

  5. 5

    【巨人】2026年 戦力外通告選手一覧

  1. 6

    消費税減税法案「衆院スピード通過」の裏にチラつく高市首相“答弁トンズラ作戦”画策の無責任

  2. 7

    ドラフトより気になる巨人「松井秀喜監督誕生」の真偽…阿部前監督のフロント入りは“伏線”だったのか

  3. 8

    (1)忍び寄る“暗黒時代”の足音…リーグ連覇の陰で深刻化した「主砲依存」と極度の育成不全

  4. 9

    【ソフトバンク】2026年 戦力外通告選手一覧

  5. 10

    【阪神】2026年 戦力外通告選手一覧