Loco Partners社長 篠塚孝哉氏「悪の哲学」で気づいたこと

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 GWは改元を記念して大型の10連休だ。旅行やレジャー関係の業界は、“特需”に沸く。旅行を計画している人も多いだろう。今回登場の篠塚さん(34)は、一流旅館やホテルに特化した宿泊予約サービスを手掛ける「Relux(リラックス)」を運営する会社のトップ。会員のニーズを吟味した施設選びが人気で、SNSのフォロワー数は業界ナンバーワンを誇る。人気企業のリーダーは、好き嫌いの壁をなくそうと、読書に励む――。

「ドキュメンタリーや創業者・偉人の話などが好きで、よく読みます。仕事柄、ビジネス書も。でも、一番は歴史モノですね。司馬遼太郎の『竜馬がゆく』『坂の上の雲』は昔から好きです。悩んだり、壁にぶつかったりしたとき、ヒントが得られる本を好むのかもしれません」

■すべて見えている西郷隆盛はスゴイ

 東洋大経済学部を卒業後、リクルートを経て、2011年に同社を創業。2年後の4月にリラックスを立ち上げる。ベンチャーを創業した激動期に出合ったのが、西郷隆盛の言葉を集めた一冊だった。

「『南洲翁遺訓』です。人材活用術や会計・財政、外交政策などが西郷の言葉で、いろいろな歴史的なシーンやエピソードを交えて語られています。そのエッセンスの一つが、祭りごとの運営の中から生まれた『徳のある人になりましょう』。今風にいえば、組織マネジメントです」

 西郷は、課長や部長、役員に据えるのは徳のある人だけにすべきだと説く。なぜか。

「徳はないけど、仕事ができる人にポストを与えると、組織が回らず、周りがついてこないと説いています。そこで、仕事ができる人には報酬を与えて、徳のある人を昇進させるのです。そうやって運営されていたわけで、西郷の洞察力や理解力、マネジメント力は半端ではない。西郷は、すべてが見えているんです。だから、何度も読み返しています。自分なりにレベルが上がって手に取ると、西郷の言葉がより一層深みを増す。そういう本がいい本だと思うし、何度も読み返すことで学びが増えるんですね」

 でも、“人生の一冊”に頼っていては、幅が広がらない。2年前、リクルートの役員と食事をする機会に恵まれ、東大のEMPという幹部候補生養成コースの存在を耳にして、チャレンジしたという。

「4月から9月まで毎週金曜と土曜に朝9時から最長夜8時まで講義があります。MBAとは違って、生物学や医学、哲学、宇宙論などリベラルアーツ17科目。最初の講義が中国哲学で『悪の哲学』(中島隆博著)という筑摩選書が課題図書に指定され、リポートの宿題です。ところが、何が書いてあるか、さっぱり分からない。『きっとこんなことが書いてあるのだろう』という推定でリポートを提出。周りに聞くと、みんなサッパリでしたから、正直、安心しました。コースの大きなテーマのひとつが、『知らないことを知る』ということ。あれが1つ目に設定されていたのは嫌がらせだと思いますが、コースの狙いはよく理解できました」

■好き嫌いをなくす読書術

 それまで以上に自分の無知に気づき、学ぶことの必要性を痛感した。

「そもそも、自分で本を選ぶという行為は、かなりバイアスがあります。しかし、宇宙論で出合った『地球一やさしい宇宙の話』(吉田直紀著)は自分では絶対に手に取りませんが、メチャクチャ面白かった。天の川の星の数の推定から全宇宙の星の数を計算したりするんです。ワクワクしますよね。講義で学ぶと、抵抗があった分野でも、一般の人が『えっ』と思うくらいの深い知識が身につきました。平日、仕事をしながら、興味のない分野を含めて毎週5冊、全100冊を読むのはハードでしたが、とても有意義でした」

 出張の機内や寝る前はいつも読書だそうだ。

「社長の勉強の幅によって、会社の伸びシロが大きく変わると思います。やっぱり大事ですよ。東大の講義をキッカケに、今まで読まなかった宗教の本なんかも読むようになりました」

 誰にも負けない知的好奇心が、年率250%の業績アップを維持する秘訣か。

 (取材・文=清水美行)

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