パンドラ社長 中野理惠さん「本のない人生はあり得ない」

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「パンドラ」は1987年設立の映画配給会社。教育用DVDの制作も行う。創業者の中野理惠さん(68)が最初に手掛けたのが、ゲイと公言し、全米初の公職に就いたが暗殺されたハーヴェイ・ミルクのドキュメンタリー、「ハーヴェイ・ミルク」。これが話題となり、以後、「レニ」「ビヨンド・サイレンス」「八月のクリスマス」「不思議惑星キン・ザ・ザ」など、海外の秀作を中心に配給してきた。

 そんな自身の今日までの足跡をつづった「すきな映画を仕事にして」(現代書館)を昨年10月に出版。読書は学生時代から熱心で……。

「いちばん読んだのは10~20代。高校では大江健三郎さん、高橋和巳さん、倉橋由美子さん、本多勝一さんの作品に熱中。特に大江さんの『奇妙な仕事』や『ヒロシマ・ノート』は何度も読みました。詩では西脇順三郎さんや白石かずこさんが好きでした。どちらも湿っぽくないところがいい」

 20代には、ワイマール憲法という民主的な憲法を持ったドイツが、どうしてヒトラーやナチスを生んだのかに関心を持ち、「ヒトラー」(ヨアヒム・フェスト)などヒトラーやゲッベルスの本をよく読んだ。

 大学に入ってから今日までは映画関係の本が多い。映画監督の大島渚や評論家の佐藤忠男の本は全部読破。

「四方田犬彦さんの『俺は死ぬまで映画を観るぞ』『日本映画は信頼できるか』もよかった。ファンの視点で映画を分析。映画への愛情が伝わってきます。最近、偶然見つけて、とにかく面白かったのは春日太一さんの『天才 勝新太郎』。この人も映画が好きですね」

 同社が配給する映画に関する本も読む。「エルミタージュ幻想」などのロシアのソクーロフ監督が好きで、「ロシアとソ連 歴史に消された者たち」(下斗米伸夫)、「ロシア革命100年の謎」(亀山郁夫他)などでロシアの裏面史を学んだ。

「ヒトラー時代、ベルリン五輪の記録映画を撮った女性監督、レニ・リーフェンシュタールを描いた『レニ』を配給しましたが、そのレニとナチスに反対してドイツを出たマレーネ・ディートリヒを対比して描いた中川右介さんの『オリンピアと嘆きの天使 ヒトラーと映画女優たち』も興味深く読みました。中川さんを知ったのは、彼の『歌舞伎 家と血と藝』を読んでから。実は私の祖父の弟、つまり大叔父が6代目尾上梅幸なのです。この本で、大叔父の知らなかったことをたくさん知ることができました」

■人生を決定づけた田中美津の「いのちの女たちへ」

 中野さんには大切な本がもう一冊ある。「いのちの女たちへ~とり乱しウーマン・リブ論」(田中美津)だ。

「新卒で就職した大企業で、女性は正社員ではなく男性の助手、定年は36歳、結婚したら退社を義務付けられるなど女性差別の実態に直面した時期に読み、その後の人生を決定づけた本です。新版は弊社で発行しました」

 年内公開に向け、田中美津を描くドキュメンタリー映画を、同社と吉峯美和監督のプロダクションで共同製作しているとか。

「本は紙の本専門。ネット購入が多い。でも書店も行きますし、神田などの古書街を歩くのも楽しい。今は自転車なので通勤時は読めませんが、それまでは片道40分ほどの電車通勤で、その間はもっぱら読書でした」

 自宅の壁に作り付けの書棚があるが、年齢を考え、蔵書の処分を始めた。人にやったり、寄付したりしている。それでも、まだ1000冊くらいある。

「本は人生を豊かにするもの。本のない人生はあり得ないです」

 だから、処分しつつ、購入してしまう。「聞き書 野中広務回顧録」や出身地伊豆の偉人の本、「江川太郎左衛門―開国派英才挫折す」(林青梧)など、読みたい本も増えていく。

(取材・文=坂本俊夫)

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