エンタメコイン社長 有田雄三氏「本は過去 未来は自分で」

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 エンタメコインは、エイベックスが昨年立ち上げた決済サービスの会社だ。夏ごろのスタートを目指しているサービスのキモは、表現者とファンが、互いに幸せになる仕掛けがあること。ファンはグッズの購入だけでなく、SNSなどで応援することによってポイントを貯めることができ、表現者が提供する特別なイベントなどに参加できるという仕組みだ。

 社長の有田さんは、ミュージシャンを目指して上京、2005年のエイベックス入社後は、May J.やシシド・カフカといったミュージシャンの音楽制作を担当してきた。金融やITの専門家ではないが、3年ほど前に、音楽業界の未来にとってフィンテック(ファイナンス・テクノロジー)事業が必要だと経営陣に直訴、新事業の責任者に抜擢された。

「僕はエンジニアではないですし、システムもつくれません。それでも『やろうと思えば、やれるんだ』って信じられるのは、20歳ぐらいに読んだ多くの本のおかげです。振り返ってみれば、人生の礎になっていますね」

 当時大きな影響を受けたのが、「成りあがり」(矢沢永吉)、「10年後の自分が見えるヤツ 1年後の自分も見えないヤツ」(落合信彦)、「メメント・モリ」(藤原新也)、「SANCTUARY」(高橋歩・磯尾克行)の4冊だ。

「僕が生まれ育った福岡県糸島市みたいな片田舎だと、音楽で飯を食うなんて現実はどこにもありません。でも、矢沢さんだって何もないところからやってきて、自分をプロデュースしていった。『成りあがり』を読んで自分も東京に行こうって決心したんです。エイベックスに入る流れができたのも、この本のおかげ。上京1年後に下北沢で初ライブをやったとき、音楽プロデューサーの伊秩弘将さんにお会いしたんですが、この人が“鬼矢沢ファン”で『成りあがり』の話で盛り上がって仲良くなったんです。そのうち『SPEED』をプロデュースしたときの話を聞き、感銘を受け、自分も音楽プロデューサーになりたいって考えるようになりました」

 落合信彦さんの「10年後――」は、雑誌「ビッグトゥモロウ」の連載をまとめたものだ。

「20代の若者向けに発信されたもので、〈考えていない人間は存在しないのと同じだ〉〈自分で作り出せない限り本当の意味での目的を見いだせない〉といった言葉の数々は自分のベースになりました。『メメント・モリ』には、人が犬に食べられている写真とともに〈人間は犬に食われるほど自由だ〉と書かれていたり、人が燃えている写真に〈遠くから見れば人間が出す光はせいぜい60ワット3時間〉とある。どう生きて、どう死ぬかなんて、自分次第なんですよね。『SANCTUARY』は、20代の何でもない若者が出版社をつくる話です。みんな、自分で自分の人生を選択している。誰だって、やろうと思えば、やれるんですよね」

 ガンホー・オンライン・エンターテイメントの創業者で「孫家の遺伝子」の著者・孫泰蔵さんとの出会いも大きかった。

「ラジオでDJをしていた方に紹介されたのが最初で、僕の師匠と言うかメンターです。エンタメコインにつながるブロックチェーンのテクノロジーや概念についても教えていただきました。著書を読むと分かりますが、泰蔵さんだって鳥栖(佐賀県)の貧しい家庭で育っています。それでもガンホーで成功する前から、コミュニティーをつくって、社会を良くしていくベンチャーのエコシステムをつくるって、熱く語っていた。泰蔵さんと接していると、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズだって、もちろんすごい人ですが、『みんな同じ人間じゃん』って思えるんです。だったら、自分も思いを実現する人生にしたい。本は原理原則や物事の本質を教えてくれますが、それは誰かの経験に基づく“過去”です。自分の未来は、自分で経験して自分で考えるしかないんですよ」

 有田さんが思い描くエンタメの未来は楽しそうだ。

 (取材・文=二口隆光/日刊ゲンダイ)

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