コロナ後は社長不在・経営管理なしのティール組織が増える

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 パーソル総合研究所の調査によると、多くの人がテレワークで集中力の欠如や仕事への意欲・やる気が減ったと回答している。そんな中、「社長がいない」「マネジメントもしない」「本社もない」といった新しい組織が国内に誕生し始めた。

 ◇  ◇  ◇

■電通社員の業務委託契約制度がスタート

 電通の個人事業主制度が今年1月からスタートした。40歳以上で勤続20年以上などのミドル社員2800人のうち、約230人が応募。同社の100%出資子会社「ニューホライズンコレクティブ合同会社」と業務委託契約し、報酬を受け取る仕組みだ。

「業務委託契約は専門的なスキルのある人材にとって高い報酬が得られる半面、最低賃金や労働時間といった労働法の規制外に置かれ、かつ社会保障の負担も加わります。電通のケースでは、最大で10年間、現行の5~6割程度の賃金が保証されるとされていますが、仕事のできない人はいずれ報酬で足元を見られるでしょう。企業にとっては、不景気の時にここから人員整理をするメリットもあります。とはいえ、今回の電通の取り組みは、正社員とは何か、会社とは……ということを問うているのだと思います」(人事ジャーナリストの溝上憲文氏)

 一部では体のいいリストラだという批判が上がっているが、リモートワークが拡大したことで、「働くとは何か?」と考えた人は多いはず。仮に元の世界に戻っても、自分の時間を削ってまでの出世に疑問を感じている人もいるだろう。

 個人事業主なら「出社義務なし」「直行直帰」「働く時間は自由」「兼業OK」と、すべて自分の都合で働くことができる。一方、溝上氏が懸念したように社会保障面のリスクはある。正社員は病気で働けなくなっても、健康保険組合から標準報酬月額の3分の2相当の「傷病手当金」が1年半給付される。フリーランスにはこれがなく、個人で保険に加入しないといけない。

 電通に先駆けて業務委託を取り入れたタニタでは、グループ本社社員の約1割が制度を利用中。業務委託の大部分は同社の仕事だから、従来からある地域限定社員(転勤なし)やスペシャリスト採用(職種を固定)に近い部分もある。

 いずれにせよ、良きにつけ悪しきにつけ、働き方が新型コロナウイルスによって激変している。

■ドラクエをイメージする「ティール組織」

 このコロナ禍を先取りしたかのように「ティール組織」(フレデリック・ラルー著)という本がある。2019年のビジネス書大賞の経営者賞を受賞したもので、組織には5段階があると説く。

 初期の組織は権力者が支配的にマネジメントする。次の段階では、社員に役割を設け、上意下達の指揮命令系統を持つようになる。3番目は成果主義を取り入れたもので、現在のグローバルスタンダード企業に多い。一部の先進企業はここから一歩進み、社員の主体性や多様性を認める組織づくりを始めている。

 そして肝心のティール組織はというと、上司や部下どころか、社長すらも存在しない。リーダー的な人はいるが、「組織の目的」を実現するために集まった共鳴者らで仕事をする。簡単にイメージすると、映画「七人の侍」やゲームの「ドラゴンクエスト」だろう。ドラクエは勇者や魔法使い、時には遊び人や盗賊といった異能なキャラクターが集まり、目的を達成するために協働する。適材適所で、勇者ばかり集めてもミッションのクリアは難しい。そしてミッションが終われば、チリヂリに去っていく。

異能が集まるライブ配信「モビオン・ジャパン」

 なんのこっちゃ、新入社員は誰が教育するんだといった疑問が出るのは当然だが、すでにそうした組織が現実に誕生している。

 企業研修やプロモーションなどのライブ配信を請け負う「モビオン・ジャパン」がそれだ。米ロサンゼルスを拠点にIBMやマイクロソフト、Amazonのライブ配信を手掛けるモビオン社の日本法人という位置付けだが、メンバーは全員がフリーランスの日本人。現地から派遣された日本支社長は存在しない。カメラマンや照明、マーケティングやSNS戦略などを得意とする人が集まり(総勢で30~40人)、ギルドを組んで仕事をする。1つの仕事が終われば解散し、また違う仕事で再会することもある。

「企業が独自に行っていたライブ配信を10万円(4時間)の低価格で請け負います。昨年4月にプレオープンしましたが、この1年間で想定の2倍を超える100組以上のライブ配信、オンラインイベントの支援を行ってきました」

 こう言うのは、モビオン・ジャパンの広報担当者。やはり外部スタッフである。決められた本社を置かず、福利厚生のような固定費もかからないため、安い料金でも仕事を請け負うことが可能なのだという。

 そして、このモビオン・ジャパンのメンバーが参加している「Rスタートアップスタジオ」(東京・港区)という起業支援の組織がある。なぜ会社でなく組織と呼ぶかというと、一応、代表取締役社長はいるが、社員は1人もいない。所属メンバー約1000人(コアメンバーは220人)は全員がフリーランス。つまり、このRスタートアップスタジオ自体が上司や部下といった概念がないのだ。

 その組織をつくり出した生原雄大社長がこう説明する。

「例えば、オーストラリアの企業が難聴者向けの技術から開発した、NuraLoopという自分専用のイヤホンがあります。その販売ルート開発やプロモーションを手掛けてほしいと依頼があり、賛同するメンバーが集まりました。もともとは個人の集まりに過ぎませんでしたが、次第にコミュニティーが出来上がり、一緒に行動する人もいる。メンバーの誰かが提案した企画が仕事になることもあります。リーダー的な人はいますが、上司や部下といった概念はない。好きな仕事を選んで集まり、また次の仕事に移っていく。働き方としては自分で選べる分、非常にラクだと思います。メンバーは社員ではなく、自身の技術を世の中に生かしたいと集まったクリエーター集団という捉え方です」

 興味深いことに、この会社自体が7年限定で発足している。先ごろ、満2周年を迎えているので、もったいないが、あと5年で消滅する。

「7年で解散するという決定に変わりはありません。私自身、会社を組織化して大きくするといった気はありませんし、そもそもコロナですら予想もできない世に、5年後の働き方は予想できませんから」(生原社長)

 特殊スキルがある人だけ限定の働き方のような気もするが、コロナによって会社の存在自体はどんどん薄れている。

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