極東の緊張に欧州を巻き込むな
「過去の総括が和解の前提になっている」
同じ敗戦国の女性リーダーの「助言」は、好戦的野望を隠さない日本のトップにどう響いただろうか。
今週来日したドイツのメルケル首相が首脳会談の場で、安倍首相の外交姿勢と歴史認識にクギを刺したようだ。会談に先立つ講演会でも、かつて不倶戴天の敵だった独仏両国の関係を引き合いに「(両国が)和解から友情に発展したのは、隣国(フランス)の寛容さとドイツが過去ときちんと向き合ったからだ」と語っていた。
安倍首相は就任以来、歴史認識や領土問題をめぐり、中韓両国を刺激し続けてきた。今も安倍首相の周辺では、今年の8月15日の戦後70年談話で、過去の談話にあった「侵略戦争」「植民地支配」という表現を削除しようとする動きがかまびすしい。
こうした歴史歪曲へ向けての蠢動は、日本から遠く離れたドイツにも危なっかしく見えるのだろう。メルケル首相の言葉は安倍首相への「歴史を直視すべきだ」という強い要求に聞こえる。そして歴代談話の過去の過ちを繰り返さない決意を踏まえ、近隣諸国と仲良くしなさい、と暗に伝えようとしたのではないか。