山下幸夫弁護士が警鐘 共謀罪「一般人に適用しない」の罠

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 安倍政権が今国会に提出しようとしている「共謀罪」法案。犯罪を計画段階から、つまり内心を処罰するもので、「平成の治安維持法」と呼ばれる悪法なのだが、政府は「一般の人には適用されない」などと毎度のだましの手口で、スピード成立を狙っている。「法案を提出されたらおしまい。その前に、世論で止めなければ」と危機感をあらわにするのは、この法案の問題点を知り尽くしている日弁連の共謀罪法案対策本部事務局長の山下幸夫氏。知れば知るほど、政府の恐ろしい企みが見えてくる。

■「組織的犯罪集団」「準備行為」は歯止めにならない

――「共謀罪」法案が今国会に提出されそうです。過去3回廃案になったものを、「テロ等準備罪」と名前を変え、政府の成立への強い意気込みが感じられます。

「国際組織犯罪防止条約」批准のため、条約が求める「長期4年以上の懲役・禁錮刑」の全ての犯罪(現在676)に共謀罪を作らなければならないというのが政府の言い分です。国連では187カ国が批准していて日本はG7で唯一批准していない。2000年の採択から16年経ち、FATF(金融活動作業部会)からも早期の批准を勧告されています。この条約は署名式をした場所から別名「パレルモ条約」と呼ばれますが、今年7月とされるG7サミットが行われるのが、そのパレルモ(イタリア)なのです。サミットで日本が批准していないことが話題になったら恥ずかしい。政府にそうした焦りもあり、今国会の法案提出を決めたのだと思います。

――187カ国が批准しているという理屈を出されると、ならば日本もと、納得させられてしまいますが……。

 この条約を批准するために新たな立法は必要ないというのが日弁連の見解です。187カ国の中で新たに共謀罪を立法した国は外務省の説明でも2カ国だけですし、600以上もの対象犯罪に共謀罪を新設しなければならないと言っている国は、日本以外にありません。条約の批准は、各国が自国の法律が条約を満たしているかどうかを自身で判断すべきもの。既に日本には共謀罪も23(例えば内乱罪など)あり、予備罪・準備罪が46あるので、条約が求めている法整備は十分になされています。ですから、条約はいつでも批准できる。実際、国会は03年に批准することを決議しているので、あとは外務省が通知すれば済む話なのです。

――条約は共謀罪を新設するための方便ということですか?

 主に警察ですが、600以上の共謀罪を持ちたい、という目的が先にある。そのために条約を名目にし、外圧を利用すれば法案を通しやすいというのが本当のところでしょう。実は日本政府は、起草段階では、「600以上の共謀罪を作ることは日本の法体系に反する」として、この条約5条に反対していたのです。600もの共謀罪を作るのは無謀だと分かっていたわけです。結局、条約に「組織的犯罪集団の関与」や「準備行為を必要とする」というオプションを加えることが認められたので、日本政府が条約5条を受け入れたという経緯があります。

――反対していたのですか! 驚きました。つまり当初は純粋な条約の批准と考えていた日本政府が、途中から条約を利用してやろうというスタンスに変わった。

 おそらく日本政府は最初、オプションを適用すれば、いくつかの共謀罪を新設するだけで批准できるだろうと考えていたと思うんです。しかし、国内法を作る段階で考えが変わって、この条約を形式的に当てはめて600以上の共謀罪を作ろうということになった。だから過去の法案には、条約が認めていた「組織的犯罪集団の関与」や「準備行為」というオプションを全く使わずに、適用範囲を極めて広くして幅広く罰することができるものにしようとしたのです。

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