森友問題を最初に追及 木村真市議が語った「疑惑の端緒」
大阪市の学校法人「森友学園」をめぐる国有地の激安払い下げ問題。今や安倍政権の屋台骨を大きく揺さぶっているが、この疑惑に最初に気付いたのが、豊中市議の木村真氏だ。2月8日、情報公開請求した当該国有地の売却額を非公表とした国の決定に対し大阪地裁に提訴。直後に記者会見を開き、新聞記事に取り上げられたのが「森友問題」が火を噴くきっかけとなった。疑惑に気付く端緒は何だったのか。
■調査のきっかけは工事現場の児童募集ポスター
――大阪地裁に提訴してから、わずか1カ月。今や「森友問題」は連日、新聞・テレビで大きく報道されています。
正直言って、最初はここまで問題が大きくなるとは思っていませんでした。ちょっと、びっくりしていますね。
――森友学園に目を付けた動機は何だったのですか。
昨年の4~5月だったと思いますが、学校の工事現場の柵に児童募集のポスターが張ってあり、そこに靖国神社の鳥居らしき写真と一緒に教育勅語が載っていました。その時、ちょっと待てと。こりゃあ極右の学校じゃないかと。そんな小学校が豊中にできるのは我慢できない。早速、事務所で学校のHPを見たら、大阪市の塚本幼稚園が小学校をつくるというのが分かりました。この幼稚園は地元では右翼系幼稚園として知られていたから、これは何としても学校設置を潰さないといけない。そう思って調べ始めたのがきっかけです。
――何が分かりましたか。
まず、土地の登記を調べました。ひょっとしたら土地取得について、何かうさんくさいことをやっているかもしれないと思ったからです。昨年5月に登記簿を取得したら所有者は国交省でした。そこで(国有地売買窓口の)近畿財務局に電話して詳細を尋ねると「定借権(定期借地権)付きで貸しています」と。この時点で何かおかしいと思いました。
――国有地貸与の何が不自然に感じたのでしょうか。
あの国有地はもともと、豊中市が国から無償で貸与を受け、公園を整備することを希望していました。都市計画道路を造り、具体的な図面まであった。ところが、国は土地はタダでは貸せないといい、07~08年ごろになると、10年までに買ってほしい、それができないなら売却すると市に最後通牒を突き付けてきました。当時の市の財政状況は阪神大震災の影響などもあって非常に厳しく、とてもじゃないが25億円も30億円も負担できません。そこで、仕方なく(道路を挟んで)東側の部分だけを買ったのです。あれほど国は市に対して強硬に買い取りを求めていたにもかかわらず、なぜか森友には貸しているという。改めておかしいと。
――それで近畿財務局に情報公開請求した。
「国有財産有償貸付合意書」の写しを請求すると、金額と一部の条件が全て黒塗りでした。しばらくして、森友が土地を買ったという話を聞いて、今度は売買契約書を請求すると、やはり金額の類いは一切黒く塗り潰されていました。過去の国有地売買の例を調べると、森友のように随意契約の案件はすべて公開されている。それなのに森友だけは非公開。これは完全におかしい。何かうさんくさいことをやっているに違いないと確信しました。
――同時並行で大阪府私立学校審議会(私学審)の審議過程も調べた。
森友案件は14年12月に継続審議になり、15年1月の臨時会で認可適当となりましたが、過去の私学審の開催状況を調べると、09年からの8年間で臨時会は森友の1回だけ。これは極めて異例の扱いで、他方、国有財産近畿地方審議会の議事録を読むと、森友案件については異論が噴出したものの、最終的には私学審でOKが出るのだから、OKにしましょうか、みたいな内容だった。この流れはどう考えても不自然だと思いました。
――それでいよいよ提訴に踏み切った。
その前に昨年10月末ごろから、今回の疑惑について3万枚のビラを作って市内を中心に配りました。籠池(泰典)理事長宅の郵便ポストには特別サービスで3枚ぐらい入れたと思います。ただ、豊中市だけで17万世帯もあるため、これではラチが明かない。じゃあ、マスコミに情報提供しようと。当初はなかなか報道されませんでしたが、売買金額の非公表の件で国を提訴して会見を開けば、どこかのメディアが取り上げてくれるかもしれないと考えました。結果、もくろみ通りといったら失礼な言い方ですが、大きく報道された。そういう流れです。