著者のコラム一覧
春日良一五輪アナリスト

長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。98年から五輪批評「スポーツ思考」(メルマガ)を主筆。https://genkina-atelier.com/sp/

ロシアの18歳フィギュア選手にスポーツが政治を超える瞬間を見た

公開日: 更新日:

 五輪休戦破り常習犯のロシアが22年北京で3回目の休戦破りをすると、ロシアと支援したベラルーシを国際スポーツ界から追放した。一方で選手を救済すべくロシアとベラルーシの選手でも、世界平和への志を誓い、参加資格基準を満たせば中立個人選手(AIN)として五輪参加を認めた。

 だが、まだウクライナ戦争は終わっていない。「力こそ正義」の情勢にスポーツは無力なのか? スポーツは選手によって成り立つ。選手の行動がスポーツで平和を創る要だ。故にオリンピックは常に選手のスポーツへのアクセスを許容する方向に動いてきた。それが上述した一連の流れだ。

 AINとしてフィギュアスケート女子シングルに出場が許されたロシア人選手アデリア・ペトロシアンは、ただ一人4回転の大技に果敢に挑戦したが失敗、6位に終わった。しかしエキシビションに招かれ、その軽快かつコケティッシュな演技は観客を魅了し大歓声がアリーナに呼応した。エキシビションの終わりに出演者たちと笑顔で手を振る姿は、スポーツが政治を超える場を見せていた。プーチンにロシアが五輪に復帰するには何が必要かを示していた。五輪初出場について聞かれた18歳の彼女は「これが私の人生の最も重要な始まり」と語った。スポーツの持つソフトパワーは軽やかな切り札となる。

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