『変わる中国 「草の根」の現場を訪ねて』麻生晴一郎著
■中国の深部
習近平政権の誕生以後、日本の嫌中論は高まる一方。しかし大事なのは“机上の愛国心”ではなく、中国の深部にまで分け入って真相を見極める努力だ。
■人権活動家ら中国の少数派の“生の声”を取材
東大在学中に中国で格安の木賃宿のアルバイトを経験。底辺の庶民たちとの付き合いに魅せられ、中国専門のルポライターへという異色の経歴を持つ著者は季節ごとに年4回、2週間ほど中国各地を旅するという。取材ではなく、経費はすべて自腹。しかしそんな体験を重ねてこそ腹を割って話せる現地の友をつくり、メールや電話では監視当局に筒抜けになる民主化運動家たちの現状や生の声にも接することができるのだ。
著者が親しく付き合う相手の多くはボランティア活動やNGO、人権問題などの活動家たち。もちろん中国では少数派で、学生で興味を持つのは1割にも満たない。だが、それだけに集まってくる若者たちの目的意識は強固で志も高い。当局の締めつけや圧力は強く、反政府活動でもないものを定期的に家宅捜索し、パソコンなどは押収して返さない。それでも確かな手ごたえはあるという。