「抗生物質と人間」山本太郎著
抗生物質によって人の平均寿命は飛躍的に延びた。しかし、近年は抗菌薬耐性細菌が原因での死亡が増え続け、2050年には毎年1000万人になるといわれている。最新の科学的知見をもとに、そんな抗生物質の過剰使用が人類にもたらす影響を解説したテキスト。
抗生物質の誕生から耐性菌出現までの経緯を紹介。その上で過去半世紀に急増した糖尿病や肥満、食物アレルギー、喘息、花粉症などの疾病の背後に、抗生物質が引き起こした人の体内に共生する細菌叢のかく乱があることを明らかにする。ヒトの常在細菌が行う生命活動「ヒト・マイクロバイオーム」と抗生物質の関係などから、「ポスト抗生物質時代」の人間と細菌の共生を考える警世の書。
(岩波書店 760円+税)