JKに踊らさせる国・ニッポン

公開日: 更新日:

「性食考」赤坂憲雄著/岩波書店2700円+税

 2018年4月、昨年に引き続き内閣府による「AV出演強要・『JKビジネス』等被害防止月間」が始まった。「JKは売り物なんかじゃない」というコピーを掲げたポスターや動画がネット上にアップされ、「ひとりで悩まないで」という呼びかけとともに、相談窓口への連絡先リストが添付されている。

 ご当地アイドルを含め、官民挙げてJK=女子高生を商品化している社会、そしてJKであることを商品化したがっている少女があふれている社会で、「JKは売り物なんかじゃない」というコピーを啓発に用いるのは皮肉以外の何物でもない。まさに「JKに踊らされる国・ニッポン」だ。

 歴史を振り返ってみると、思春期の少女は社会の秩序を揺るがす危険な存在、神に近いタブーな存在として扱われてきた。本書「性食考」では、さまざまな神話や民族の儀式の中で、性交未経験の生娘を食べる・交わる・殺すことに関する逸話が数多く登場する。

 共同体の男子が力を合わせて一人の生娘を全裸に剥き、犯し、殺し、その肉体を食べることによって、ムラの豊穣や繁栄を祈願する。

 目を覆いたくなるような残酷極まりないエピソードも多数登場するが、神話の時代から平成も終わりを迎えつつある現代に至るまで、私たちのやっていることはそう変わらないのではないだろうか。

 自らの性的欲求をかき立てる「危険な存在」「けしからん存在」として、思春期の少女を一方的に神に仕立て上げたり、過剰に蔑んだりする。

 そして彼女たちに対する性暴力や陵辱行為を「社会秩序の維持のため」として正当化・商品化し、場合によっては神聖化する。徹頭徹尾、男性目線だ。

 当たり前の話だが、少女は本質的に危険な存在でもなければ、神に近い存在などでもない。そうみなす男性側の歪んだ視線があるだけだ。

 神話の時代から連綿と続く男尊女卑の歴史の中で、私たちはこれまでも、そしてこれからも、JKに踊らされ続けるしかないのかもしれない。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    横浜・村田監督が3年前のパワハラ騒動を語る「選手が『気にしないで行きましょう』と…」

  2. 2

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  3. 3

    マツコが股関節亜脱臼でレギュラー番組欠席…原因はやはりインドアでの“自堕落”な「動かない」生活か

  4. 4

    松井秀喜氏タジタジ、岡本和真も困惑…長嶋茂雄さん追悼試合のウラで巨人重鎮OBが“異例の要請”

  5. 5

    巨人・田中将大と“魔改造コーチ”の間に微妙な空気…甘言ささやく桑田二軍監督へ乗り換えていた

  1. 6

    5億円豪邸も…岡田准一は“マスオさん状態”になる可能性

  2. 7

    小泉進次郎氏8.15“朝イチ靖国参拝”は完全裏目…保守すり寄りパフォーマンスへの落胆と今後の懸念

  3. 8

    渡邊渚“初グラビア写真集”で「ひしゃげたバスト」大胆披露…評論家も思わず凝視

  4. 9

    「石破おろし」攻防いよいよ本格化…19日に自民選管初会合→総裁選前倒し検討開始も、国民不在は変わらず

  5. 10

    大の里&豊昇龍は“金星の使者”…両横綱の体たらくで出費かさみ相撲協会は戦々恐々