俳優・大出俊さんが語る「酒好きのおごり」に気づかされた日

公開日: 更新日:

 私たちには1週間、2週間と続く地方公演の中の一日だけど、お客さんにとっては生で舞台を見られる数少ない一日。まさに一期一会。それがその日なわけです。

 ところが、私といえばいつものように前夜に深酒して二日酔い状態。頭はガンガンするし、気分は悪い。正直な話、体調は万全ではなかった。

「私は何をしてるんだ。お客さんに失礼ではないか」……。スーッと血の気が引きましたよ。これではイカン! と。

 その日以来、公演やロケの前日は深酒をやめました。どんなに“お付き合い”があっても軽く飲んでサッと引き揚げ、本番に体調のピークがいくようにコントロールする。それが客席にお越しくださり、またはテレビやスクリーンの前でご覧になってる方への感謝の気持ち、礼儀です。

 7年前、胃がんの摘出手術をして、胃は正常時の3分の1しかありません。だから、晩酌は欠かさないものの、若い時分よりめっきり酒量は減りました。

 でも、もし気仙沼で深酒をやめる決心をしなかったら、この年まで役者を続けていられたかどうか……。

 そう思うと、あの夏の暑い日ってのは、私の酒人生の中でも大きな意味があったんだね。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  2. 2

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  3. 3

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  4. 4

    国宝級イケメンの松村北斗は転校した堀越高校から亜細亜大に進学 仕事と学業の両立をしっかり

  5. 5

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  1. 6

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー

  2. 7

    【京都府立鴨沂高校】という沢田研二の出身校の歩き方

  3. 8

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  4. 9

    複雑なコードとリズムを世に広めた編曲 松任谷正隆の偉業

  5. 10

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした