書本&cafe magellan(宮城・仙台市)約8.5坪の店内にびっしり1万冊なのにどこかやわらかい空気
仙台の文化拠点「せんだいメディアテーク」の近く。晩翠通に「本、お売りください」と小さな看板が立ち、奥へ進むと段ボールに本がずらり。種類まちまち。さっそく桜木紫乃と杉浦日向子の文庫本をにぎり、ガラス戸を開ける。
美術、思想、郷土、オカルト、文学、絵本、暮らし関連……。約8.5坪の店内にびっしり約1万冊。なのに、どこかやわらかい空気に満ちているのは、中ほどにテーブルと椅子が配されているためか。「本もコーヒーも」の店だ。
「2007年にオープンしたので、20年目に入りました」と、店主の高熊洋平さん。
旧帝大のある町には良き本屋があると言われるが、「東北大北門近くが古本屋街ですが、減りましたねー。一方で、新しく始めるウチみたいな本屋が増えたので、総数は変わらないかも」。
そんな仙台の本屋事情を聞きながら、店内を改めて見回すと、久野収、鶴見俊輔、森崎和江、マン・レイ、沢田教一、はたまた「明治・大正・昭和政界秘史」「日本語そして言葉」「書店人国記」「吉兆味ばなし」などの本から視線がバシバシ飛んでくる。そして、どの本棚にも横積みした本あり。インデックスがないことにも気づく。
「横積みは少しでも多く置くための苦肉の策。カテゴリーを決めると、本の見方が縛られてしまう気がして。探していた本の少し横にある、それまで興味のなかった分野の本に目移りしてもらえたらうれしいなと」
大航海者の名を掲げ分類を超えて本と出合わせる
高熊さんが大学卒業後に就いたのは、県立図書館の司書職だった。すべての本を公平に扱うのが公立図書館のミッションだが、古本屋では1冊ごとに価値づけが違う。
「そっちに興味が移ったんです」
古書店や飲食店で働く5年間の準備期間を経て、開店に至ったそう。「ある程度おさえている」のは、美術と思想哲学関係とのことで、石巻在住の志賀理江子さんの写真集も見せてくれつつ、「分野が偏らないようにバランスを取るよう気を使っています」。なるほどーである。
ちなみに屋号の「マゼラン」は、占いのできる修験者がひらめいた名前。大航海者の名を掲げ、分類を超えて本と出合わせる。図らずも、ぴったりの名前になった。
◆仙台市青葉区春日町7-34/℡022-224-7560/地下鉄南北線勾当台公園駅から徒歩5分/午前10時~午後8時(土・日曜は午後7時まで)、火曜休み(盆期間も同じ)
ウチの推し本
「評伝 尾形亀之助」秋元潔著
「尾形亀之助は仙台にゆかりのある、大正から昭和初期の詩人です。宮沢賢治の葬儀に草野心平と出かけたものの、泥酔して宮沢家から追い出されたなどエピソードに事欠かない人。生活はだらしなかったけれど、その詩は無気力さや気の抜けたところが魅力で、地味に人気あります。詩集が絶版になるたび、地元をはじめいろんな人たちが復刻してきました。この評伝もとても面白い一冊です」
(冬樹社刊 古本売価 3000円)
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