シネマライズ元支配人が語る「渋谷ミニシアターブーム」
「毎回超満員、プログラムも売れに売れて印刷が間に合わない。デザインに凝った表紙だったけど、銀インクが乾ききらないまま並べる羽目になって、触ると指紋がついちゃったりしてね」
ミニシアター全盛期の様子を懐かしげに話すのは、かつて渋谷文化の発信地といわれたシネマライズ(閉館)の元支配人、頼光裕氏だ。パンフ印刷が追い付かない大ブームとなった「トレインスポッティング」(96年、英)は33週ロングランの記録を打ち立てた。その20年ぶりの続編「T2 トレインスポッティング」が公開されて話題の中、渋谷のサブカル文化の栄枯盛衰を語ってもらった。
「『アメリ』(01年、仏)の初日なんかスペイン坂の下までお客さんが並んでね。当時は劇場側と配給会社が一丸となって盛り上げる空気があって、宣伝スタッフが行列を見て一緒に泣いていたよ。でも今では初日の数字がこれじゃダメ、なんてデータひとつで厳しく判断されてしまう。あの頃は、最後のいい時代だったんじゃないかな」
■「質の高い尖った作品が減った」
ネットもSNSもない時代、流行を発信・共有する場は美容室やセレクトショップなど街中にあったという。そこに集う感度の高い若者を夢中にさせる作品を、シネマライズは次々と打ち出していた。