【対談】室井佑月×井筒和幸 「世に怒りの種は尽きまじ」

公開日: 更新日:

「国のためにって言ってる人の方が愛国的じゃない」(室井さん)

 室井佑月さんの本紙連載コラム「嗚呼、仰ってますが。」(毎週木曜)が連載50回を突破。同じく本紙で連載中の井筒和幸監督のコラム「怒怒哀楽劇場」(毎週金曜)もまもなく100回ということでスペシャル対談が実現。怒っても怒り足りない2人が縦横無尽に右から左までブッた斬る!

  ◇  ◇  ◇

室井 監督と私が情報番組に出始めてもう20年くらいかな。昔は雑多だったよね。ヘアヌードについて聞かれたと思えば、次は国政だったり。

井筒 そやな。今は世の中の見方が一元的になって、昼間のテレビで反愛国的なことなんかまったく言えなくなった。

室井 えっ、監督が? 大丈夫だよ、私なんて「東京オリンピックなくしたら」って言ってみたよ。

井筒 本当は「オリンピックなんてやめちまえ、ひとつもおもろない。都民のどれだけがオリンピックに賛成してると思います? 勝手にやってるんやないか国が。俺たちにどんな御利益があるのか」と言いたい。

室井 確かに(笑い)。本当と言えば、オリンピックは誘致から広告からすべてが利権でカネの動きが汚いのよ。開催してもいいけど、2020年まで一番大事なニュースが隠されるのが嫌。平和な祭典なら、IOCは放送権全部タダで配信しろ、って言いたい。協賛企業は見返りというより名誉でやるようになればいい。

井筒 カネ儲けで血なまぐさい祭典になってるのに、平和の祭典もヘチマもないわけよ。そもそもうちら文芸界はスポーツに無関心な人も多いからな。

室井 今はそれすら言えない雰囲気だもんね。

井筒 排外主義が横行してる。その昔、テレビで俺に三宅のオヤジ(政治評論家の故・三宅久之氏)が「愛国者ですか?」と言ってきた。国を憎むときもあるから否定したら、「国を愛せないのなら、国を出ていくしかない」と恐ろしいことを言ってくるから「それはないやろ」と睨み合いになった。でもそんな言い分がまかり通っているのが今やねん。

室井 心の中のことって命令されることじゃないよね。

井筒 心は国を愛するためだけじゃない。国を憎んでもアメリカに渡るわけにもいかないし、しょうがなしにいる人の方が多い。

室井 国のために、って言ってる人の方が意外と愛国的じゃないと思うよ。

室井 この前、読売新聞の社会面(5月22日付)に前川前事務次官の出会い系バーに行った話が載ってて驚いた。犯罪でもないのに社会面のトップに書かれるなんて狂ってる。権力側は平気で犯罪をもみ消すのに、権力に逆らう側は出会い系バーに行っただけで犯罪者扱いされるなんて恐ろしい。マスコミはもっとリークじゃなくてスクープを上げられるようにきちんと頑張って欲しい。

井筒 加計の獣医学部ももう止めようのないことばっか報道して、テレビ見ても何の意味もない。うっとうしすぎるわ。

室井 共謀罪も、安保法案も、秘密保護法のことも遅い。議論が湧き起こらないようにしてるんだよね。政治専門のコメンテーターの中には、注意して聞いていないとちょろまかす人もいたりする。ある人は加計問題で「国家戦略特区のほうが監視の目が厳しくなる」って真逆のこと言ってたもん。

井筒 そもそも「国家戦略の特区」なんてあること自体気味が悪い。大間違いや!

室井 そうだ、そうだ。総理大臣がトップダウンで、お役所の承認手続きすっ飛ばせるんだから、正反対なのに。

井筒 そんなもん、役所がやってりゃいい次元の話や。

室井 安倍首相主催の桜を見る会に、森友問題で雲隠れしていたアッキーが登場しても「あの件どうなりました?」って一言も聞く記者がいないのにも驚いた。

井筒 ヘタレ番記者しか呼んでへんのか。

室井 テレビも森友問題や北朝鮮のミサイル問題で騒いでおきながら、何事もなかったように「桜を見る会」の映像を挟んでくる。全て連動した問題なのに。私と監督が「桜を見る会」呼ばれたら絶対聞くよね?

井筒 あのオバハンさ、4年前にワルシャワの映画祭で一度会ったことあるのよ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  5. 5

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  1. 6

    兵庫県・斎藤元彦知事らを待ち受ける検察審の壁…嫌疑不十分で不起訴も「一件落着」にはまだ早い

  2. 7

    カズレーザーは埼玉県立熊谷高校、二階堂ふみは都立八潮高校からそれぞれ同志社と慶応に進学

  3. 8

    日本の刑事裁判では被告人の尊厳が守られていない

  4. 9

    1試合で「勝利」と「セーブ」を同時達成 プロ野球でたった1度きり、永遠に破られない怪記録

  5. 10

    加速する「黒字リストラ」…早期・希望退職6年ぶり高水準、人手不足でも関係なし