日本社会を案じ…西部邁さんが知人に語っていた「遺言」
保守派の論客で知られ、テレビ朝日の「朝まで生テレビ!」などでも活躍した西部邁さんが21日、死去した。78歳。東京大田区の多摩川で自殺を図り、溺死したとみられる。河川敷で遺書が発見された。通夜、葬儀・告別式は行われない。
西部さんは北海道出身。東大在学中、東大自治会委員長として60年安保闘争で指導的な役割を果たした。86年に東大教授に就任したが、教員人事の進め方を不満として88年に辞任。80年代以降は戦後日本の保守は本当に保守の名に値するかという問いを発し続け、対米追従的な「親米保守」を鋭く批判してきた。
14年に妻が他界。最近は自身の死への思索を深め、著書などでも言及する機会が増えていた。
昨年12月刊行で帯に「最期の著書」と書かれた「保守の真髄」(講談社)の中で、「自然死と呼ばれているもののほとんどは、実は偽装」だとし、その実態は「病院死」だと指摘。自身は「生の最期を他人に命令されたり弄り回されたくない」と「自裁死」を選択する可能性をほのめかしていた。
長く主宰した論談誌「表現者」も昨年、顧問を引退。最近、西部さんと会った知人によると、「今の日本社会に言いたいことはたくさんあるのに発表の場がない。なぜ、誰も私の話を聞きにきてくれないのか」と嘆いていたという。