事件の“犯人”らと交流 映画「獄友」監督が考える幸せとは

公開日: 更新日:

 映画「獄友」(全国公開中)が話題だ。狭山事件、布川事件、足利事件、袴田事件といった戦後の大事件の“犯人”らの日常や友情を描いた作品である。金聖雄監督(円内)は「僕らの常識から見ると、彼らは不幸に決まっていますが、時々幸せそうに見えるなという瞬間がある」と言う。2010年に狭山事件の石川一雄さんと連れ合いの早智子さんに出会ったのを機に、“獄友”たちと交流を深めてきた。

「偏見と言うのかな。勝手なイメージがあったけど、会ってみると『この人はやっていないな』という“根拠”が生まれる。自分の感覚で確証はないけど、確信は持てますね。それで彼らを集めたらどんな話が出てくるだろうと考えたんです」

 作品を見ていると「幸せとはどういうことだろう?」と考えさせられるものの、不思議と悲観的な気持ちにならない。金監督も言う。

「足利事件の菅家利和さんが弁当開けるのにもごもごしていたら、布川事件の桜井昌司さんがバッと開けて『ムショ暮らしが短いからダメなんだよ』って突っ込んでいた。彼らは工場がどうだったとか、懐かしくもうれしそうに高校の同窓会みたいに語り合っている。当たり前なんだけど、刑務所の中でも青春があって、生きてきた証しがある。全員冤罪(えんざい)を訴えていて、石川さんや袴田事件の袴田巌さんは今も戦っているけど、それを晴らすだけの人生じゃないんですね」

 布川事件の冤罪被害者で29年獄中にいた桜井昌司さんも「不運だったけど、不幸ではない」と語っていた。幸せかどうかは自分で決められる。そんなメッセージが込められている秀作だ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷の「新・代理人枠」狙い大物エージェントが虎視眈々…争奪戦勃発は待ったなし

    大谷の「新・代理人枠」狙い大物エージェントが虎視眈々…争奪戦勃発は待ったなし

  2. 2
    阪神・大山悠輔 今季中にFA権取得見込みであるのか? まさかの巨人流出…ロッテ、楽天も虎視眈々

    阪神・大山悠輔 今季中にFA権取得見込みであるのか? まさかの巨人流出…ロッテ、楽天も虎視眈々

  3. 3
    大谷「英語力」格段向上の皮肉とプラス効果 元通訳・水原容疑者の裏切りが副産物を生んだ

    大谷「英語力」格段向上の皮肉とプラス効果 元通訳・水原容疑者の裏切りが副産物を生んだ

  4. 4
    小室圭さん年収4000万円でも“新しい愛の巣”は40平米…眞子さんキャリア断念で暇もて余し?

    小室圭さん年収4000万円でも“新しい愛の巣”は40平米…眞子さんキャリア断念で暇もて余し?

  5. 5
    水原一平容疑者は刑務所に何年ブチ込まれる? 違法賭博発覚への「妨害工作」次々判明

    水原一平容疑者は刑務所に何年ブチ込まれる? 違法賭博発覚への「妨害工作」次々判明

  1. 6
    長渕剛の大炎上を検証して感じたこと…言葉の選択ひとつで伝わり方も印象も変わる

    長渕剛の大炎上を検証して感じたこと…言葉の選択ひとつで伝わり方も印象も変わる

  2. 7
    メジャー29球団がドジャースに怒り心頭! 佐々木朗希はそれでも大谷&由伸の後を追うのか

    メジャー29球団がドジャースに怒り心頭! 佐々木朗希はそれでも大谷&由伸の後を追うのか

  3. 8
    福原遥が挑むNHK朝ドラ&大河W主演「歴代4人の超難関」への道…まずは2025年「べらぼう」出演

    福原遥が挑むNHK朝ドラ&大河W主演「歴代4人の超難関」への道…まずは2025年「べらぼう」出演

  4. 9
    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

  5. 10
    若林志穂さん「生活保護受給」をXで明かす…性被害告発時のアンチ減り、共感者続出のワケ

    若林志穂さん「生活保護受給」をXで明かす…性被害告発時のアンチ減り、共感者続出のワケ