著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

金委員長 悪知恵はイムジン河に捨て水鳥の自由知ってみろ

公開日: 更新日:

 北朝鮮の金委員長がまたアメリカと会談することになったとか。要は先に経済制裁を少しでも緩めてほしいのだ。そうでないと国にお金がないからだ。核施設の正確な解体リストをアメリカに示さないことには制裁解除されないのはよく分かってるくせに、アメリカをさらにじらせるだけじらせ「親書」というチョコレート代わりのラブレターを何度も未来の金づるに送り、「再会談」義理デートを要求していたわけだ。お金にコスい女の意地悪いタカり方に似て、ドタマのいい上手な外交だ。

 制裁から逃れ、国に「外貨」が入って少しでも国民に回るようになるには早いとこ“非核化”のためにやることをちゃんとやった方が明日のためなんだぞ。在日の人たちよ、そうだろ? 再度の会談で“マッチョ商人”トランプに心変わりをさせないよう、次こそが正念場じゃないのか。未来の金づると援助交際を始めたいなら、疑ってばかりいないで早いとこ休戦協定から平和協定に切り替えて、前に進んでほしいものだ。

 南と北の境をとうとうと流れるイムジン河(臨津江)の河岸に、15年前に故・加藤和彦と散策しに行ったことがある。観光で川を見渡せる韓国側の展望台ではない。韓国陸軍の一分隊に警護、道案内されて、ソウルから国道を1時間半ほど北上した寒村の岸辺に到着したら、「イムジン河」の歌どおりに水鳥が100羽ほど北の地からこっちの頭上に飛んで来て、空にぐるりと輪を描いて水辺に降り立ち、我らを歓迎するように鳴いていたのを思い出した。手に持っていたクロワッサンを丸ごと境界ゾーンの金網越しに投げてやると、若い分隊長のキム軍曹が慌てて近寄って、「エサはダメです。こんな姿も向こう側は監視してるので油断しないで」と注意した。加藤さんが、「水鳥はスパイじゃないよ。エサ外交ぐらいケンチャナヨ!」と笑顔で返した。軍曹も笑い、「南北が一つになるのは願いですが、今は緊張が続いているので控えて下さい」と。川面が穏やかに光っていた。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  3. 3

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 4

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  5. 5

    来春WBCは日本人メジャー選手壊滅危機…ダル出場絶望、大谷&山本は参加不透明で“スカスカ侍J”に現実味

  1. 6

    詞と曲の革命児が出会った岩崎宏美という奇跡の突然変異種

  2. 7

    高市政権にも「政治とカネ」大噴出…林総務相と城内経済財政相が“文春砲”被弾でもう立ち往生

  3. 8

    「もう野球やめたる!」…俺は高卒1年目の森野将彦に“泣かされた”

  4. 9

    連立与党の維新が迫られる“踏み絵”…企業・団体献金「規制強化」公明・国民案に立憲も協力

  5. 10

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋