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荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<3>顔のない遺影 親父の死がフレーミングを教えてくれた

公開日: 更新日:

 この写真も親父が撮ってくれたものでね、オレが小学校3年のころに作ったゾウの粘土工作なんだ。オレがこういうのを作ると、すごく喜んでくれて、「おまえは上手だぞ」って、ほめて、写真を撮ったりしてくれた。オレが写真を撮ると「ノブはスナップがうまい」って、ほめてくれてね。オレのことを最初におだてたプロデューサーみたいなのは、親父だったんだよね。

 オレが写真をやることに確信を持ったっていうか、写真はこれだって分かったのは、親父が死んだ時だね。これは親父が死んだ時の写真でね、お祭りが好きだったから祭りの時の浴衣を着せて、ゴザの上で数珠を持ってる。

 病気で入院して死ぬまでが長かったから、一緒に銭湯に行っていた頃の元気な親父の顔じゃなかったんだ、やつれちゃって。そんなの最後の遺影に撮りたくない。だから顔はカットする。

 それで腕をまくって、腕の入れ墨を見せる。冗談だけど、入れ墨を入れればヤクザになれるって思ったらしいんだけどね。いつも一緒に銭湯に行って、背中流して、元気な親父の腕の入れ墨を見てた。だから親父が見せたい入れ墨を見せる。下駄の職人の手を入れる。見たくないものは切る。写真に撮ると、ずーっと残っちゃう、思い出しちゃうからさ。

 そういうような、残したくないもの、記憶から消したいものはパッとみんな切っちゃう、切り捨てる。そういうのから始まっているの。で、あ、そうか、写真というのはフレーミングだなと。自分が除外するものと入れるもの、そういう作業なんだと。親父が教えてくれたんだよ、フレーミングっていうことをね。

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