著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<11>新婚旅行で撮った「センチメンタルな旅」は1000部販売

公開日: 更新日:

 陽子と結婚したのが(1971年)7月7日。結婚式の後に、すぐに新婚旅行に行ったんだよね。新幹線で、京都、柳川、長崎、4泊5日の旅だった。その旅行を撮影したのが『センチメンタルな旅』。1000部刷って、売ったんだよね。写真集を新宿の紀伊國屋(書店)に持って行ったら置いてくれたんだ。その頃、3階か4階に自費出版ものとかのコーナーがあって、前衛もののアートの作品集や詩集や写真集を持っていくと、いいものは置いてくれたんだ。

写真って、被写体と撮る人の二人で作るものなんだ

 はじめ持って行ったときは、文章はなかったんだよ。担当のヤツがぱっーと見てくれて、「これはいいから、説明したほうが売れるから、何か書きなさい」って言われて、書いたんだ。この文章は左手で書いたんだよ。こんなこと書くなんて恥ずかしいからさ。(読者への手紙形式の文章「(略)この『センチメンタルな旅』は私の愛であり写真家決心なのです。自分の新婚旅行を撮影したから真実写真だぞ! といってるのではありません。写真家としての出発を愛にし、たまたま私小説からはじまったにすぎないのです。もっとも私の場合ずっと私小説になると思います。私小説こそもっとも写真に近いと思っているからです。(略)」)

 タイトルと「1000部限定 特価1000円」という文字は陽子が書いた。そこに文字を書いたから合作じゃなくて、もう撮ること自体が共作だからね。被写体になることと撮る人は。二人で作るものなんだから、写真って。

 最初から作品にしようと思って撮ってないから、撮り方もけっこういいかげんなんだ。本もほとんど、撮った順に並べてる。まず、新幹線から始まるだろ。それから京都に着いて、はじめのほうは、二人で歩きながら、淡々と街並みを撮ってる、そういう撮り方なんだ。

後から見ると、もう三途の河を渡ってるんだよねぇ

 陽子が寝てるでしょ、舟で。柳川の川下りの舟なんだ。後から見ると、もう三途の河を渡ってるんだよねぇ。で、胎児の形をしてるでしょ。こんなの無意識に撮ってたんだよ。実際はね、新婚旅行だから、もう毎晩やってて、疲れて寝てるんだよね。

 陽子はすごかったね。この写真集を友達や上司に売ってたんだ。自分のファックシーンが写ってるんだぜ。その当時の上司で、買って持ってるヤツがいたんだよ。「奥さんに買わされました。何だかよくわからなかったけど、いま思うと名作ですね」ってね(笑)。

 陽子と出会い、陽子との結婚から「センチメンタルな旅」は始まったんだ。 

(構成=内田真由美)

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