著者のコラム一覧
一雫ライオン作家

1973年、東京都出身。明治大学政治経済学部2部中退。俳優としての活動を経て、演劇ユニット「東京深夜舞台」を結成後、脚本家に。数多くの作品の脚本を担当後、2017年に「ダー・天使」で小説家デビュー。21年に刊行した「二人の嘘」が話題となりベストセラーに。著書に「スノーマン」「流氷の果て」などがある。

「ストレス」嫌いな言葉。使わないようにしている。

公開日: 更新日:

 が、もちろんストレスが嫌で環境を変える方もいるし、それも生き方のひとつだ。

 わたしの知り合いにGさんという男性がいる。大学を卒業し30年、芸能事務所でマネジャーとして働いていた。そのGさんが数年前、突然「マネジャーを辞めた」と連絡してきた。

「今、どうしている」と尋ねると、「都内某所に来い」という。

 指定された場所に行くと、Gさんはうなぎの寝床みたいな狭い坪数の店で、法被を着てたこ焼きを焼いていた。

 決して立地のいい場所ではないのに。10人ほどが行列までつくっている。器用にピックでたこ焼きを転がしながら、満面の笑みを浮かべGさんはまくし立てた。

「ライオン! おれはもうタレントは懲り懲りだ! あいつら、デビューしたての時は仕事くれ仕事くれって頼んできといて、ちょっと売れりゃ、やれこの仕事イヤ、休みくれ、揚げ句にゃスタジオ入ってるのに、“飼ってる犬に餌あげてきたか忘れた”とか言って、ぎゃーぎゃー泣き出して楽屋から出てこねえんだぞ! 餌なんて知るか! もうそんなストレス地獄はごめんだ! おれはな、前からたこ焼き屋をやるのが夢だったんだ。それにたこ焼きはいいぞ! 焼いても焼いても文句言わねえんだから!」

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