著者のコラム一覧
てれびのスキマ 戸部田誠ライタ―

1978年生まれのテレビっ子ライター。最新著「王者の挑戦『少年ジャンプ+』の10年戦記」(集英社)、伝説のテレビ演出家・菅原正豊氏が初めて明かした番組制作の裏側と哲学をまとめた著者構成の「『深夜』の美学」(大和書房)が、それぞれ絶賛発売中!

ダメな部分をさらけ出す落語好き「R-指定」の業の肯定

公開日: 更新日:

 この頃はまだ、古典落語の良さは分からずに2代目快楽亭ブラックや、立川談笑の「シャブ浜」など過激なネタを聞いていた。R―指定がラップのすごさを伝えるため、独自に編み出した「聖徳太子ラップ」。彼の代名詞となった客や共演者から幾つかのお題をもらい、即興で披露するラップは、落語の「三題噺」のようだ。そう指摘され、R―指定は一時聞かなくなっていた落語を再び聞くようになった。すると、桂米朝らの落語にハマった。

 立川談志は「落語は人間の業の肯定」と言ったが、その言葉を聞いた時、R―指定は「めっちゃヒップホップやん」と思った。彼が落語を好きなのは「人間のダメな部分の話があるから」(サイゾー社「サイゾー」16年6月号)だ。

 人間の「憎めんな、アホやな」というところを肯定してくれる。R―指定がラップを始めた当時、ラッパーたちはみんなキャラ立ちし、声を聞いただけで誰かが分かる人ばかりだった。だが、彼の声は「普通」だった。特殊な人生を歩んできたわけでもない。コンプレックスの塊だった。

 けれど、ある時からラップでは「『俺はモテないし、ダメなやつで、運動神経も悪い』ってコンプレックスをさらけ出せる」(note「cakes」16年6月1日)ようになった。「このままじゃダメだ」「ここしか居場所がない」と思っていた時に、「いや、そうじゃないよ」というメッセージをくれたのがHIP HOPだったという。

 R―指定は自分の弱さやカッコ悪さという「業」をラップで肯定し続けているのだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    マエケンは「田中将大を反面教師に」…巨人とヤクルトを蹴って楽天入りの深層

  3. 3

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 4

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  5. 5

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  1. 6

    陰謀論もここまで? 美智子上皇后様をめぐりXで怪しい主張相次ぐ

  2. 7

    白木彩奈は“あの頃のガッキー”にも通じる輝きを放つ

  3. 8

    渋野日向子の今季米ツアー獲得賞金「約6933万円」の衝撃…23試合でトップ10入りたった1回

  4. 9

    12.2保険証全面切り替えで「いったん10割負担」が激増! 血税溶かすマイナトラブル“無間地獄”の愚

  5. 10

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?