芽吹きの春に読みたい「植物の本」特集
「世界の食用植物図鑑」ジョセフ・シムコックスほか著
春は植物たちの芽吹きが賑やかになり、生命力に満ちあふれる季節だ。今回は、食用植物から道端の名もなき雑草まで植物のユニークさと力強さに触れる個性豊かな本を集めてご紹介。花粉症がつらくて出かけられなくても、本の中で植物の奥深さに触れて欲しい。
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「世界の食用植物図鑑」ジョセフ・シムコックスほか著
著者のひとりであるジョセフ・シムコックス氏は、世界中の食用植物を記録することに取り組む植物専門の探検家。歴史の中で忘れ去られた種、エリアが限られほとんど知られていない種などを文献から探し出し、何千にも及ぶ食用植物を試食し種子採取を行ってきた。本書はその集大成的な一冊で、ユニークな見た目の食用植物がおよそ400点の写真で紹介されている。
どう見ても食べ物には見えない食用植物も多い。地面から、焦げたガマの穂のような先端部分をニョキリとのぞかせるのは、オシャグジタケ科のキノモリウムコッキネウム。地中海からアラビア半島に分布し、乾燥した地域を好む。地面を掘ると長い茎が伸びており、この部分を食す。著者によると“ウインターグリーンミント風味”で、見かけによらずサクサクしてジューシーなのだとか。生で、塩をつけて、酢漬けにしてなど、食べ方もレクチャー。食べてみたいような、遠慮したいような……。 (STRAIGHT 3300円)
「緑をみる人」村田あやこ著
「緑をみる人」村田あやこ著
アスファルトのひび割れ、マンホールのふち、側溝の奥底など、都市空間の隙間で繁茂する“名もなき植物たち”を愛好する人々のインタビューと、ご自慢の写真を集めたのが本書だ。
雨水を排出するため、擁壁などにパイプが埋め込まれた水抜き穴。その小さな空間で芽吹く植物に魅せられているのが、水抜き穴協会のモリタケンイチ氏だ。水抜き穴の植物は、基本的に入れ替わりはないという。春にタンポポの花が生え、冬には葉っぱが落ちて小さくなるが、春にはまた蘇り花を咲かせる。その小さな世界でサイクルを繰り返すさまに、生き物としての強さを感じるそうだ。
この感性は日本人独特のものではないようで、本書には13カ国19人による、名もなき植物への愛がつづられている。都市整備という人間の意図とはまったく関係なく、その隙間で育まれる“野生”の姿。足を止めて周りを見渡すだけで、豊かな植物の世界が発見できるのだ。 (雷鳥社 2640円)
「植物園の歩き方」カシワイ著、保谷彰彦監修
「植物園の歩き方」カシワイ著、保谷彰彦監修
いわゆる植物園のガイドブックだが、一味違うのがすべてイラストで紹介されている点。漫画家の著者が実際に訪れた植物園について、植物の詳細はもちろん温室の空気のにおい、湿度、樹木に触れた感覚まで描かれ、写真よりもリアルに伝わってくる。
掲載されているのは全国9カ所の植物園。例えば、一般に開かれた公立の植物園として日本で最も歴史のある京都府立植物園。約12万本の植物が栽培され、川端康成の小説「古都」に登場するくすのきの並木、霧で満たされた高山植物室など見どころも多い。2024年に開園100年を迎えた同園で、100年前の植物の姿に思いを馳せるのもいいだろう。
巻末では、著者が出合った植物の詳細を図鑑形式で掲載。北海道大学植物園のエゾノチチコグサ、高知県立牧野植物園のムジナモなど絶滅危惧種について知ることができるのも有益だ。
カバー裏にもたくさんの植物園が紹介されているので、めくってみるのをお忘れなく。 (グラフィック社 1980円)
「地球を救う植物のすごい知恵」中西友子著
「地球を救う植物のすごい知恵」中西友子著
一般的に植物の観察といえば地上に見える葉や花が中心で、根っこには注目しにくい。しかし、植物は“人間を逆さまにして土に立てたようなもの”と言われ、根の形態は時に地上部より複雑に発達しているという。
例えば樹木の場合、その半分以上が地下の根。これまでに記録された最大級の樹木の根は、地下53メートル、幅20メートルにも及んでいたという。アメリカ・アリゾナ州の鉱山付近での発見例だ。
作物の根の発達も樹木に劣らない。イネの1株あたりの根の総延長は、何と2.5~3キロ。イネの穂が形成される成熟期では、1立方センチあたり50センチ以上とぎっしり詰まるほど発達するという。
さらに、その伸び方もパワフル。根が2センチほどになると50分ごとに1回転、先端がドリルのように回り始め、土中を掘り進んでいくというから驚きだ。
知っているようで知らない、植物の秘めたる力を分かりやすく解説する本書。地球の生態系を支える植物のすごさを再認識できる。 (日経サイエンス社 2420円)



















