古書 フローベルグ(蔵前)高い天井、重厚な本棚…海外の古本屋に迷い込んだよう
カフェや雑貨の店が増えて散策が楽しい蔵前。レトロなビルの1階の一室をフルリノベーションした本屋さんだ。
ドアを開けると、天井が高く、店の奥へ視線がすっと伸びる。どこか海外の古書店に迷い込んだみたい、と思った。本棚が重厚なアンティークだったりもする。11坪。正面の机に目を落とすと、まつむらまいこ「きょうはもうねます」、ただあやの「満ちている」などすてきな装丁の絵本が積まれ、まるで小さな展示のようだ。
「イギリスの本屋に似ていると言われますね」と店主の中村啓太さん。この店の始動は2020年だが、中村さんは青山ブックセンターなどで働いた後、オンライン販売を軸に、カフェに卸したり、催事に出たり。古書の世界に入ってもう11年になるそう。当初はオールジャンルを取り扱ったが、洋書絵本やアート中心にシフトさせたのは、「隆盛になったインスタと親和性が高かったから。お客さんに育ててもらいました」と。
屋号は17世紀のドイツ生まれの作曲家、フローベルガーにちなんで。フランスかぶれの彼はフランス風に「フローベルグ」と楽譜にサインしていたそう。そんなこんなの話を聞きつつ、洋書絵本の棚に目を向ける。
「洋書絵本は1800年代からのものを揃えています」
北欧、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ……と、区分されているが、いずれも絶妙の色づかい。いつ頃の古本ですか?
「近代絵本の成立期とされる1800年代から、ですね。1880年ごろ、イギリスでウォルター・クレインとケイト・グリーナウェイ、ランドルフ・コルデコットの3人と、木口(こぐち)木版という手法を始めた出版人エドマンド・エヴァンズが協働し、ハイクオリティーの印刷と大量生産をかなえたんです」
中村さんはあまり口数が多い方ではなさそう、との最初の印象がころっと変わり、言葉が躍り出した。「絵本は印刷技術の発展と不可分なメディアです」と紙と印刷について教えてくれる。「レコードがなかった19世紀末から20世紀にかけて、子どものために家庭で“楽譜絵本”が必要だったんです。ま、上流階級でしょうけど(笑)」と、その“楽譜絵本”の数々を見せてくれる。
さらに、ちょっと面白かったのは、アメリカの図書館から除籍になった本。1958年の出版という「IN THE MIDDLE OF THE TREES」には、貸出票を入れる袋の貼り付け跡が。多くの人に読まれ、そしてここへやってきたんだろうな──。
選ぶのは、内容重視? ビジュアル重視? と聞くと、「その両方です。コロナ前まで頻繁に仕入れにヨーロッパ、アメリカに行ってましたが、航空運賃が上がりすぎて。今は懇意な海外の古本屋から送ってもらっています。毎年1万冊ずつ11年見ているので、作家のつながりも分かるようになってきました」
よく来るお客さんが、絵本作家だったというケースも多いそうだ。
◆台東区蔵前4-14-11 ウグイスビル101/℡03-5829-3793/都営浅草線蔵前駅A0出口から徒歩2分/正午~午後6時/水曜休み
ウチが作った本
「Hommage aux artistes du livre d’enfants du passé」大桃洋祐、きくちちき、原倫子ほか著
「邦題は『在りし日の、子どもの本の芸術家たちへのオマージュ』。昨春、当店で開催した10周年記念展の図録です。この企画展は、活躍中の10人の絵本作家、イラストレーターの方々に、それぞれオマージュする、1967年までに亡くなった作家を選んでもらい、オマージュ作品を描いてもらったものでした。この図録には、作品図版とともに、その作家をオマージュするに至った経緯が、創作への思いを含めてつづられています」(Frobergue 1800円)



















