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てれびのスキマ 戸部田誠ライタ―

1978年生まれのテレビっ子ライター。最新著「王者の挑戦『少年ジャンプ+』の10年戦記」(集英社)、伝説のテレビ演出家・菅原正豊氏が初めて明かした番組制作の裏側と哲学をまとめた著者構成の「『深夜』の美学」(大和書房)が、それぞれ絶賛発売中!

伊集院光が証明し続ける 人間の想像力こそ最大のエンタメ

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 もともと「伊集院光」という芸名は、三遊亭楽太郎(現・円楽)の弟子だった頃、師匠に無断でラジオに出ることになったため、それがバレないように自分の風貌から最もかけ離れた名前として付けたものだ。ラジオは声と名前、語彙といった限られた情報から想像するしかないメディア。そこから、どんな風貌なのか、リスナーごとに想像できるというのも大きな楽しみのひとつだ。伊集院はラジオをやっているときの快感について、次のような例を出して説明している。

「松の木におじやぶつけたみたいな不細工な顔の女」(フジテレビ「僕らの音楽」08年12月12日)

 その言葉を聴いた時に思い描く顔は一人一人違う。映像が使えないから、想像を働かせなければならない。けれどその分、自由度が高いのだ。そんな想像力を使った遊びで、かつて伊集院がラジオ番組で生み出したのが「芳賀ゆい」という名の架空アイドルだ。

「歯がゆい」という言葉がアイドルっぽいという話になったのをきっかけに、そのプロフィルをみんなで考えようと伊集院が悪ノリを始めると、リスナーから大量のハガキが届いた。やがて、実在しないのに写真集やCDも発売され、「握手会」まで開催。集まった2000人のファンはカーテン越しに、誰だか分からない手と握手をしていったのだ。さらに「芳賀ゆいのオールナイトニッポン」として番組まで作られた。

 伊集院は人間の想像力こそが最大のエンターテインメントであることを証明し続けている。

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