六月大歌舞伎 玉三郎「桜姫」奇跡の演技、熱量失う観客席

公開日: 更新日:

 6月の歌舞伎座第2部は、4月に続いて、仁左衛門と玉三郎の鶴屋南北作「桜姫東文章」の「下の巻」。チケットは発売早々に完売している。この2人での「桜姫」は36年ぶりだったので、4月は上演が実現したことそのものが「奇跡だ」と話題になり、公演が始まると、その2人の変わらぬ若さと美しさが奇跡だと評判になった。

「下の巻」前半は仁左衛門演じる清玄と権助が中心となるが、後半から玉三郎演じる桜姫が突拍子もない行動に出て、物語の主導権を得てぐいぐいと突き進む。見ていて、唖然とするしかない。二重の意味であり得ないものを見せられる。ひとつは、「こんな、あり得ない」という物語の奇想天外さ、もうひとつは、「あり得ないと分かっているけど、こういう人、いるかもしれない」と思わせる玉三郎の演技だ。やはり奇跡だ。

 何も文句はない。ただ、客席が、冷静に鑑賞している雰囲気なのが気になった。4月は熱気があったのに、この1カ月間に、日本に何があったのだろうと思うほどの変化だ。(鶴屋)南北の退廃と猥雑が、清潔さと潔癖さが求められる時代に合わないのか。舞台と客席とがひとつになる演劇体験が蘇るまで、まだ時間がかかりそうだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    国分太一との協議内容を“週刊誌にリーク”と言及…日本テレビ社長会見の波紋と、噴出した疑問の声

  5. 5

    衆院定数削減「1割」で自維合意のデタラメ…支持率“独り負け”で焦る維新は政局ごっこに躍起

  1. 6

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  2. 7

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    立花孝志容疑者を追送検した兵庫県警の本気度 被害者ドンマッツ氏が振り返る「私人逮捕」の一部始終

  5. 10

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較