芸人としてもオススメ!大学お笑い青春小説「ぼくには笑いがわからない」上村裕香著
「ぼくには笑いがわからない」上村裕香著
自分と同じ職業を扱っている小説にはつい厳しい目で見てしまう。読書あるあるのひとつだと思っている。私なら芸人が出てくるものは軒並み厳しめで見てしまう。
しかし、そんな中で久しぶりにうならされたのがこちらだ。著者の上村さんはデビュー作「救われてんじゃねえよ」、2作目「ほくほくおいも党」で高い評価を得ている。その2作でも「お笑い芸人好き」が小説から香っていたのだが、3作目の本著ではその香りがむせ返るほど全開、なのに哲学的で読みやすさもあるとても好ましい青春小説になっていた。
主人公は京都の大学生、耕助。文学部で学んでいる彼はマジゾッコンな一目惚れをした美女、百合子に自分の書いた「言語と身体性の関連」の論文を渡して自己アピールをするもあえなく撃沈。彼女に好きなタイプを聞くと「おもしろい人」と返ってきたことで耕助は更に頭を抱える。おもしろいとはなにか。ぼくにはまったくわからない。こう断言するほど人を笑わせることに無頓着だった耕助。それでも百合子とお付き合いがしたい。耕助は友人と漫才コンビを組み、M-1グランプリに挑戦することに。優勝すれば百合子はキスをしてくれると約束できたが果たしてどこまでやれるのか……。
この小説、特に秀逸な点は、お笑い文化の変遷と、芸人ではない「学者が研究した」笑いのメカニズムをかなりうまく組み込んでいるところだ。
一昔前までは、芸人はバカがなるもの。高卒、中卒当たり前だったのだが、この小説では昨今、令和ロマンやラランドなど、多方面で活躍するタレントを生み出した「大学お笑いサークル」の現場からスタートする。
そしてここが重要なのだが主人公は大手芸能事務所の養成所に入れず、昔ながらのストリップの間にネタをやる劇場に出入りするのだ。芸人をやってる身でもかなり意外な展開なのだが、この話の運び方こそお笑いは何が変わって、何が変わってないのか読者は深く理解できると思う。
大事なことを最後に書くが、この話、しっかり笑える。特に耕助の相方、将吉のツッコミは素朴で人間らしく、かつ的確でとても好感度が高かったので注目してもらいたい。書店員としても芸人としてもオススメの一冊。 (KADOKAWA 1870円)


















