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桧山珠美コラムニスト

大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」に「今月のダラクシー賞」を長期連載中。

東京五輪で前倒しの夏ドラマを斬る スタートダッシュで明暗が

公開日: 更新日:

 夏ドラマのスタートが東京五輪開催を見越して例年に比べて早い。なんだかんだいっても、開催すれば五輪中継が最優先され、今年の夏ドラマはなにかと分が悪い。ラインアップを見ると、いつも以上に病院ものや警察ものが目立つ。警察ものは「ボイスⅡ」(日本テレビ系)、「刑事7人7」(テレビ朝日系)、「緊急取調室4」(テレ朝系)と定番が並ぶ。

■まるでジャニーズの大量消費

 特筆すべきはジャニーズタレントの多さでフジテレビ系「ナイト・ドクター」に岸優太、「イタイケに恋して」(日テレ系)は菊池風磨、「痴情の接吻」(テレ朝系)に橋本良亮、「彼女はキレイだった」(フジ系)に中島健人、「#家族募集します」(TBS系)には重岡大毅、「武士スタント逢坂くん!」(日テレ系)に濵田崇裕と各局まんべんなく。五輪に紛れてジャニーズ大量消費という感じだ。

派手さでは「TOKYO MER」が…

 病院モノはフジ系「ナイト・ドクター」とTBS系「TOKYO MER~走る緊急救命室~」を見比べると面白い。前者は夜間救急専門チーム「ナイト・ドクター」、後者は救命救急チーム「TOKYO MER」の活躍を描くどちらも架空医療モノ。どうせなら壮大な嘘を見せておくれという点では見るからにお金のかかってそうなのは「TOKYO MER」で、地味な「ナイト・ドクター」は対照的だ。

 主演の波瑠以下、田中圭、岸優太、北村匠海、岡崎紗絵と夜間の話は華やかさに欠ける。主要メンバーが社宅住まいというのも病院と社宅で大半が片付き、やっつけ感が否めない。医者だって悩みもあるとばかり、それぞれの事情を描くことに時間を割き、病院ドラマというよりは職業医師たちの人間ドラマという色合いが強い。

 それに比べて「TOKYO MER」は派手。大事故に大災害、「西部警察」かと見まがう大爆発まである。彼らが乗り込む最新医療機器とオペ室を搭載した大型車両(ERカー)はウルトラ警備隊のメカのよう。鈴木亮平演じる主人公の喜多見は驚異的な救命技術を持つスーパー救命医でチームに課されたのは死者ゼロ。まるで「私、失敗しないので」の「ドクターX~外科医・大門未知子~」の再来を思わせる。万事休すかと思われたところに神風が吹き、難を逃れるパターンは「半沢直樹」譲り。TBS日曜劇場の王道といえる娯楽作だ。

「TOKYO MER」構想は都知事の鳴り物入りの組織で、厚生労働大臣(渡辺真起子)いわく、「あの人はパフォーマンスが上手だから」と。都知事・赤塚梓を演じるのは石田ゆり子。ゆりこつながりでのキャスティングだろうが、「こっちのゆり子の方がいい」と都民の嘆きが聞こえてきそう。

 お金をかければいいというものでもないが、これくらいスケールの大きなドラマで浮世の憂さをぶっ飛ばしたいもの。

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