上野・鈴本7代目の矜持「コロナ禍でも看板を下ろさないを第一義と考え、生き残るための決断をした」

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「鈴本演芸場」7代目席亭・鈴木敦さん

 双子のパンダ誕生で沸く東京・上野。江戸幕府第13代将軍、徳川家定の御代に誕生した講釈場を母体にした寄席「鈴本演芸場」がある。開場164年目の今年、7代目の席亭(寄席のトップ)が誕生した。鈴木敦さん、39歳。若き席亭に、コロナ禍の寄席経営のかじ取り、大名跡復活などについてうかがった。

  ◇  ◇  ◇

「席亭」になり約4カ月。「(呼ばれ方には)まだ慣れないですけど」と戸惑いつつも「決断の連続ですね」と責任の重さを日々実感している。

 父で現会長の6代目、鈴木寧さん(68)に「そろそろどうだ」と打診されたのは今年1月のこと。

「父も40歳で席亭に就任していますから、そろそろかなという予感はありました」と受け止めたが、脳裏をよぎったのは、昨春の緊急事態宣言以降打撃を受け続けている寄席経営の難しさだ。

 ほぼ年中無休の寄席業界が、昨年から今年にかけ、一斉に止まった。異常事態だった。鈴本も、昨年4~6月、今年1~3月、そして5月のゴールデンウイークと計100日以上、木戸を閉ざした。

「昨年9月に半期の決算が終わって、その数字を見て愕然としました。前年比で7~8割減。この赤字をずっと垂れ流したら先が見える」

 と、危機感を父と共有したという敦さんは、「『寄席の看板を下ろさない』を第一義と考え、生き残るための決断をしました」と振り返る。

 昼の部、夜の部の2部構成の営業を当面昼の部だけに絞り、経営資源を集中。年中無休が看板の業界に「月曜休業」を導入した。従業員の整理にも踏み切った。

 東京・入谷。初代の鈴木龍助から代々の席亭が眠る鈴木家の墓所。すぐ隣に、鈴木家の家紋が彫られた小ぶりな墓がある。

「江戸時代や明治時代の身よりのない従業員が眠っています。従業員を大事にする文化がずっと伝えられてきましたから……」と大ナタを振るった人事案件には、今も苦しい思いをにじませる。

 経営体制を強化すると同時に、コロナ対策にも奮闘してきた。

 体温カメラの設置、自動券売機の導入、1席おきの入場制限、酒を飲み弁当を広げる楽しみも、「待ってました!」の掛け声も禁止。

 木戸が開けられない中、昨年5月にはYouTubeに「鈴本演芸場チャンネル」を開設した。「老舗ほど新しいことをしなさい」という父の教えが生きた。

オンライン寄席の狙いはどんぴしゃり

 今年4月、無観客開催という、演芸にとっては実に非現実的な要請を東京都から受けた際には、久しぶりにオンライン寄席に踏み切った。

「寄席をやるやらないのバタバタがあって、寄席演芸ファンの方々に『寄席はいつも通りだよ』とお伝えしたかった」という狙いはどんぴしゃり。ライブで約5700人、アーカイブも含めると約15万人を引き付け、「芸人応援チケット」の購入に結び付けた。仕事の中止や延期が相次ぐ芸人からは「こんなに(出演料を)もらっていいんですか」と驚かれたという。

 しばらくは昼の部だけの興行だったが、7月、8月の2カ月は、久方ぶりに夜の部が戻っている。橘家文蔵(7月上席)、柳家喬太郎(7月中席)がネタ出し(その日の演目を事前に公表すること)で務めた芝居は盛況で、21日からは桃月庵白酒がトリを務める下席。客が足を運びやすい仕組みとして、歌舞伎座を参考に敦さんが発案した「幕見券」が導入される。

「以前、隅田川馬石師匠のトリの際に試したら、評判も売り上げもよかったので」と再び。入場料3000円が中入り後には1500円になるお得感が、寄席演芸ファンにはうれしい。

「いろいろ試せて楽しいですよ。当たり前じゃなかったことができる」と、コロナ禍でも席亭冥利を感じている敦さんの話は、落語界の大名跡、古今亭志ん生の襲名問題にも及ぶ。=つづく

(聞き手=演芸評論家・渡邉寧久)

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