(9)誕生日にタランティーノが家にやってきて「私の次回作に出てください」と

公開日: 更新日:

 その次回作こそ日本を舞台にした「キル・ビル」だった。物語はユマ・サーマン扮する凄腕の女殺し屋の復讐劇だ。復讐相手の一人が日本のヤクザのボスとなっていて、これをルーシー・リューが演じた。

 クエンティンが私のために用意してくれたのはユマに最強の刀を授ける服部半蔵の役だった。半蔵はかつて忍びと刀鍛冶をやっていたが、今は沖縄に身を潜め、マズい寿司屋をやっているという設定である。

 しかし、服部半蔵の役名はさすがに不自然だ。

「服部半蔵は現代ではなく江戸時代の人物なんだが」

 私が抗議すると、クエンティンは「まったく問題ありません」と言い切った。

「これは僕が少年時代から見てきた映画やテレビの記憶の断片で構成されたファンタジーの世界ですから」

 だったら、私はクエンティンの世界観の中に身を預けるしかない。荒唐無稽であることも映画の楽しさであり、私はそんな世界観が嫌いではない。

 私はクエンティンの要望で、「キル・ビル」に役者としてだけでなく、武術指導でも参加した。主に担当したのはユマ・サーマンとルーシー・リューだった。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  5. 5

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  1. 6

    兵庫県・斎藤元彦知事らを待ち受ける検察審の壁…嫌疑不十分で不起訴も「一件落着」にはまだ早い

  2. 7

    カズレーザーは埼玉県立熊谷高校、二階堂ふみは都立八潮高校からそれぞれ同志社と慶応に進学

  3. 8

    日本の刑事裁判では被告人の尊厳が守られていない

  4. 9

    1試合で「勝利」と「セーブ」を同時達成 プロ野球でたった1度きり、永遠に破られない怪記録

  5. 10

    加速する「黒字リストラ」…早期・希望退職6年ぶり高水準、人手不足でも関係なし