著者のコラム一覧
荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

「手洗い」は健康だけでなく“お財布”も守る

公開日: 更新日:

「しっかり手を洗いましょう」──。風邪や食中毒の季節になると口を酸っぱくして言われますが、正直、「またか」と思う方も多いはず。しかし、じつは手洗いが「家計や社会にとって非常におトクな投資」だという驚きの研究結果をご存じでしょうか? 

 ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)の研究チームが2026年に発表した最新の論文です。

 世界中の過去の研究を統合して分析した結果、せっけんを使った手洗いの普及が、どれほど経済的な価値を生むかが明らかになりました。せっけんでの手洗いを習慣づけるだけで、下痢のリスクが30%、呼吸器感染症(風邪や肺炎など)のリスクが17%も減少します。

 これだけでも十分すごいのですが、注目すべきはその「コスパ」です。論文によると、手洗いを広める活動に投じた費用に対し、社会が得られる利益を計算したところ、「1ドル(約160円)の投資に対して、平均2.1ドル(約336円)の価値」が返ってくるという結果が出ました。投資の世界で考えれば、元本が2倍以上になって戻ってくるようなものです。病気で仕事を休むことによる損失や、高額な医療費を払うリスクが減ることを考えれば、これほど手堅い投資はありません。

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